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「呪術廻戦」に熱視線、激甘な「僕ヤバ」 今年注目の漫画

芥見下々著『呪術廻戦』1~13巻(集英社)
芥見下々著『呪術廻戦』1~13巻(集英社)

 「『鬼滅』は漫画業界全体を救った」。コロナ禍の令和2年は、多くの漫画関係者がこう口にした一年だった。社会現象化した漫画「鬼滅の刃」(吾峠呼世晴<ごとうげ・こよはる>、集英社)を読むことで漫画に興味を持ったり、再び漫画を読むようになった人も多いだろう。では次に、どの作品を読んだらいいのか。今年注目の作品を紹介する。(文化部 本間英士)

「呪術」在庫切れも

 注目作の一番手はやはり、週刊少年ジャンプ(集英社)で連載中の「呪術廻戦(じゅじゅつかいせん)」(芥見下々<あくたみ・げげ>)だろう。

 同作のキーワードは、後悔や恥辱などの感情から生まれる「呪い」。主人公の高校生たちは、友情や努力という「正の感情」ではなく、いわば「負の感情」で強力な化け物に立ち向かうのだ。この設定自体が重ければ、ストーリーも重い。いい味を出した人物があっさりと死に、物語から退場したりもする。それなのに、バトル描写に勢いとゲーム性があり、力技で物語に引き込まれてしまう。

 ごく普通の高校生の部分と「イカれた」部分をあわせ持つ主人公の虎杖(いたどり)をはじめ、人物描写が重層的で魅力的。それと、最強の呪術師・五条悟がとにかく格好良いのだ。対戦相手に「寝不足か? 毛穴開いてんぞ」と絶妙なケンカの売り方をするヒロイン的存在の野薔薇(のばら)など、各キャラクターのセリフのキレもすごい。

 昨年10月放送開始のアニメ放送で人気が加速。放送直前(同9月28日)には850万部超だったシリーズ累計発行部数(電子版含む・以下同)は、同12月16日時点で1500万部を突破するなど、破竹の勢いを見せる。在庫切れの書店も多く、書店関係者の一人は「部数の伸び方で言うと『鬼滅』以上では」と語る。

「ジャンプ+」に勢い

 集英社はほかにも多くの話題作を抱える。注目は漫画アプリ「少年ジャンプ+(プラス)」の作品だ。

 「チェンソーマン」(藤本タツキ)は、多くの漫画ファンが「新たな才能」のきらめきを感じた作品だろう。「悪魔」がいる世界が舞台のダークファンタジーなのだが、ストーリーの先読みが全くできず、多くの読者が作者の掌上で翻弄される楽しみを見いだしたはず。昨年、週刊少年ジャンプでの連載は終了。ただし、舞台を「+」に移して「第2部」が始まるといい、期待が高まっている。

 「+」発の人気作品といえば、ホームコメディー「SPY×FAMILY」(遠藤達哉)。スパイの父と殺し屋の母、超能力者の娘、未来予知できるペットの犬…など特盛り状態の設定ながら、「家族」の絆という正統派テーマを温かな筆致で描写。昨年末発売の最新6巻の初版発行部数が100万部を突破するなど、とにかく勢いがある。

 先月に1巻が発売されたばかりの「怪獣8号」(松本直也)も要注目。近年のジャンプ作品では「鬼」「呪霊」「悪魔」などが暴れ回っているが、こちらの作品で暴れ狂うのは「怪獣」。夢破れた大人である主人公が、子供の頃の夢をかなえるため再起する下りは「宇宙兄弟」(小山宙哉・講談社)を彷彿(ほうふつ)させるが、そう一筋縄にストーリーは進まず…。こちらも「+」発で、今後さらに人気が加速しそうである。

勢いある「カッコウ」

 昔ヤンキー漫画、今ラブコメ漫画…という印象を受ける週刊少年マガジン(講談社)。隔世の感を覚える中でも勢いを感じるのが、「カッコウの許嫁(いいなずけ)」(吉河美希)だ。

 主人公は勉強に命を懸ける男子高校生。物語の冒頭で、この主人公が出生時、後の人気美少女インフルエンサーと取り違えられていたことが判明。親の判断で「許嫁」にされてしまう。近年はやりのラブコメ設定を多く取り入れた王道的作品であり、「四角関係」のさや当てを楽しめる一方で、「取り違え」というテーマが重い。いろいろと裏も潜んでいそうで読ませる作品だ。「御朱印集め」が趣味のヒロインというのも、一周回って逆に新鮮。

 書店には中世ヨーロッパ風の異世界を舞台にした作品が数多く並ぶ。その中でも切り口が面白いのが、週刊少年サンデー(小学館)で連載中のファンタジー作品「葬送のフリーレン」(山田鐘人原作・アベツカサ作画)である。

 世界を救った勇者パーティーの「その後」を描いたストーリー。人間の勇者ら仲間が死にゆく中で、長寿のエルフである魔法使いフリーレンが残される。「人間の寿命は短いってわかっていたのに、なんでもっと知ろうと思わなかったんだろう」。勇者の死に接し、こう涙を流すフリーレン。死者たちの記憶をたどりながら旅をしていく描写が心にしみる。一話ごとに軽く数年単位が経過する時間感覚も珍しくていい。

 エルフと人間という種族による寿命の違いは、人間と犬猫などペットとの関係にも重なる。異世界を舞台とした作品は、もはや大喜利でもやっているのかと思うほど深化、多様化しているが、その中でも毎年面白い作品が続々と生まれるのだから、ジャンルの底強さを感じざるを得ない。

ネット揺るがす「僕ヤバ」

 昨年、手塚治虫文化賞(短編賞)などに輝いた和山やま。多くの漫画ファンが注目する若手漫画家だ。昨年、1巻が刊行された「女の園の星」(祥伝社)は、女子校が舞台のコメディー。男性教師の星先生がクラスの生徒たちに翻弄される様子がコミカルに描かれるのだが、独特の絵柄にシュールな間、セリフ回しの巧みさが実に魅力的だ。

 同じく昨年刊行の「カラオケ行こ!」(KADOKAWA)もまた面白く、 読者を「ほんの少しだけ変」な独特の世界観に引きずり込んでくれる。両作品は「このマンガがすごい!2021」オンナ編第1位、5位にもそれぞれ選出。今後が見逃せない。

 昨年、「次にくるマンガ大賞 2020」のWebマンガ部門1位に選ばれた「僕の心のヤバイやつ」(桜井のりお・秋田書店)も要注目作品である。

 「僕ヤバ」の愛称で親しまれる同作は、「陰キャ」(根暗なタイプ)の男子中学生と、自身とは対照的な「陽キャ」女子が織りなす青春ラブコメ。2人の不器用で純粋、そしてちょっと不純な「恋心」のさや当てを受け、ときめきの導火線が体中を走る読者が続出。漫画サイト「マンガクロス」で月2回ペースで最新話が配信されるたび、あまりの激甘&甘酸っぱさにインターネット上で阿鼻叫喚がこだまするのが恒例となっている。

 「鬼滅」人気が象徴するように、今の漫画は日本エンタメ界の“柱”となっている。コロナ禍で親戚や友人ともなかなか会いづらい現在、電子版でも気軽に読める漫画は最高の友となり得る。いち漫画ファンとして、今後の注目作の展開と、令和3年の漫画界を担う“新星”の誕生を心待ちにしている。

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