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大人がはまる読書感想文 コロナ禍で人生見つめ直す機会に

青山ブックセンター本店では、noteと出版社が共催する読書感想文投稿コンテストの課題図書を集めた書棚も登場=東京都渋谷区(篠原那美撮影)
青山ブックセンター本店では、noteと出版社が共催する読書感想文投稿コンテストの課題図書を集めた書棚も登場=東京都渋谷区(篠原那美撮影)

 大人を対象とした読書感想文コンクールが盛況だ。コロナ禍の自粛生活で読書する機会が増えたことに加え、文章に限らず画像や映像で表現できる自由度の高いコンテストが登場するなど、子供時代の夏休みの宿題とは一線を画した楽しみ方も出てきた。選考委員を務める専門家は「人生経験を重ねているからこそ読書感想文に取り組むことで得るものは大きい」と語る。

過去2倍以上の応募

 「新型コロナウイルスの感染拡大による外出自粛期間と重なって、応募作品が過去最多だった回の2倍以上集まった」。そう語るのはNPO団体「大人の読書感想文コンクール」運営事務局代表の佐野雅弘さん(32)。今年4~7月に受け付けた第9回のコンクールが予想以上に人気を集めたと振り返る。

 同コンクールは平成29年夏に始まった。きっかけは佐野さんがツイッターで何げなく「読書感想文」と検索したことだった。投稿されたツイートには、子供時代、宿題として取り組んだ読書感想文に対する大人たちのネガティブな言葉があふれていた。

 「子供のころの記憶に引きずられ、読書自体に苦手意識を持っている人が多いという印象を受けた。大人になって読書感想文に取り組めば、違った味わいを感じられるかもしれない。読書の楽しさを再体験してもらう場としてコンクールを立ち上げた」という。

 選考委員には小説家や編集者に加え、一般の会社員や主婦も参加。会社員の佐野さんを含め、スタッフはみな、本業の傍ら業務に携わっている。佐野さんの私費で運営しているが「回を重ねるごとに応募も増えており、これからも続けていきたい」と話す。

村上春樹作品も

 文章や画像が投稿できるプラットフォーム「note」では、12の出版社と共催で読書感想文投稿コンテスト「#読書の秋2020」を開催中だ。今月30日まで受け付け、すでに5000以上の作品が集まっている。

 運営会社によると、note全体の投稿数に占める読書関連記事の割合は前年比42%増(令和2年上半期実績)。「もともとユーザーには書き手になりたい人が多く、読書感想文の投稿も非常に多かったが、コロナ禍で在宅時間が増えた結果、本を手にする機会が増えているのではないか」と分析する。

 出版社にとっても、書籍PRや才能ある書き手との出会いにつながるいい機会だ。文芸春秋は今春、今回のコンテストに先立ち、村上春樹さんが自身のルーツについてつづった『猫を棄てる 父親について語るとき』の刊行を記念する感想文コンテストを開催した。250本近く集まり、優秀作品が特設サイトに掲載された。

 「文芸春秋の方からは、自社の書籍の感想をnoteユーザーに書いてもらうことで、プロモーションにつながったという声をいただいた。ユーザーにとっても、プロの編集者に読んでもらえるだけでなく、noteや出版社のサイトを経由して作家本人に感想が届くという夢もある」と同社ディレクターの志村優衣さん(32)は語る。

 文章だけでなく、漫画や映像、音楽の投稿も可能なnoteだからこその楽しみ方もあるという。

 「本を読んで浮かんだ情景を写真で撮ってもいいし、課題図書に合う音楽のリストでもいい。読書で生まれた素直な感情を自由な形でアウトプットして、楽しんでもらえたら」(志村さん)

取り組む意義

 高校生と社会人を対象とした読書感想文コンクールを10年以上続けている明治大学でも、今年の応募数は過去2番目の多さだった。

 選考委員長を務める文学部長の合田正人教授(63)は応募作を読んで「感想文に取り組むことで、ものの見方や社会への関わり方、生き方そのものが変容する人が多いのではないかと感じた」と話す。

 情報があふれる現代社会にあって「じっくり読むことや、書くことを忘れ、非常に直感的な反応だけで世界を見ている人が多いのではないか」と指摘する合田教授。「そんな今だからこそ、人生経験を重ねた大人が、もう一度読書感想文に取り組む意義は大きい」と話している。

(文化部 篠原那美)

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