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Gotoイートの原点は「明暦の大火」にあり? 国立歴史民俗博物館で「日本の食の風景」展

幅6尺、奥行き3尺の天ぷら屋台を描いた「大道風俗絵巻」明治初期か(個人蔵)=国立歴史民俗博物館提供
幅6尺、奥行き3尺の天ぷら屋台を描いた「大道風俗絵巻」明治初期か(個人蔵)=国立歴史民俗博物館提供
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 新型コロナウイルス感染拡大で打撃を受けた飲食業に対する政府の支援策「GoToイート」の利用者が増える中、「外食」の歴史に焦点をあてた展示が29日まで、国立歴史民俗博物館(千葉県佐倉市)で開かれている。「日本の食の風景-『そとたべ』の伝統」では浮世絵や写真、古道具などさまざまな資料から、「外で食べること」の意味を民俗学的に解き明かしている。(文化部 伊藤洋一)

「そとたべ」の食文化

 現在の日本の食文化には、2つの大きな流れがあるという。一つは、武家の供応料理として発達した本膳料理。中世の禅宗寺院の料理の影響を受けた室町時代の京都では貴族、武家、有力商人が集まっていたこともあり独自の文化が醸成されていった。格式ある食事方法だ。

 もう一つが、花見や祭りなどで食べる弁当と、屋台などでのカジュアルな食事、つまり外食だ。

 「和食が(2013年に)ユネスコ無形文化遺産に登録されてから食文化に関心が集まったが、和食とは何か-の規定は難しく明確にされていない。屋内で食べる本膳料理に対し、祭りの屋台でちょっと食べることなどを“そとたべ”と呼び新しい枠組みを設定することで、日本の食文化の特徴をとらえようと試みました」と話すのは同館の関沢まゆみ教授(民俗学)だ。

江戸期にも営業自粛

 外食の歴史は明暦3(1657)年の大火に端を発するという。浮世草子「西鶴置土産」(元禄6年、1693年)などには明暦の大火のあと、金竜山浅草寺の門前で奈良茶飯の店ができたとの記述がある。現在の炊き込みご飯定食だ。大火からの復興事業に従事する大工や左官職人の食生活をまかなうため魚・野菜を煮て提供する「煮売り屋」も出現。しかし繁盛しすぎたため再びの大火事を心配した幕府により、1661年には店舗での営業が午後6時までに制限され、夜間の行商を禁じるお触れが出るまでになったという。

 洛中洛外図屏風からは、江戸より先に京都でうどん屋が現れていたことがわかっているが、1686年のお触れでは、うどんやそばを名指しして夜間の販売を禁じている。〆(しめ)のラーメンならぬ屋台の麺類は、当時の江戸町人にも絶大な人気だったようだ。

おにぎりとおむすび

 宮中の花見の最初とされるのが、嵯峨天皇が弘仁3(812)年に天皇家のための庭園、神泉苑(京都市)で開いた宴。大名屋敷での花見を描いた三代歌川豊国の天保年間(1830~44年)の浮世絵には、黒塗りの岡持ちや酒だるをもつ女性が登場する。今回の展示では、三段の重箱と酒用水滴が収納できるピクニックセット「花見提重(さげじゅう)」も見られる。

 一方、農村でも春には山や礒(いそ)へ出かけ、弁当を食べるなどして楽しんでいた。忙しくなる田植え前に豊穣(ほうじょう)・豊作を願うものでもあった。天保8(1837)年から約30年つづられた風俗誌「守貞謾稿(もりさだまんこう)」には、「京都大坂は俵型、江戸は円形、あるいは三角(のおにぎり)が見られる」と表記されているそう。いまは三角おにぎりが普及しているが、それぞれに歴史と意味があった-と解説している。

お墓の前で大宴会

 東北や九州の一部では、お盆に親戚が墓地の前に集まり、先祖をいつくしむ「はかたべ」の風習が残っている。「そとたべ」同様、関沢教授の造語だ。先祖の霊とともに飲食するのが大切とされる民俗伝承で、その習慣がない地域でも、墓参りでそなえたものを口にすれば夏に病気をしないといわれる。

 新型コロナの影響で、友人や会社関係など日常の宴席だけでなく、親類が年に1~2回集まるのさえ控えるケースも多くなっている。ただ関沢教授は「秋田県での事例などは本家の求心力が強いため、(はかたべの習慣は)衰退しないのでは」と見立てる。

 外でちょっと食べる「そとたべ」を屋台の流れをくむものと、持参弁当の流れがあるものに定義する関沢教授は、広島名物のお好み焼きを“屋台派”の一例にあげる。

 「屋台は人が集まる都市のような場所で生まれる。明暦の大火から煮売り・焼き売りが出て屋台になった。広島では終戦後の廃虚のなか、屋台で始まったお好み焼きが郷土食になっていった。混沌のなかに新しいものが創出される伝承の動態は、時代が違っても共通している」とダイナミックな論を立てる。

 なにげなく利用する外食の歴史をたどれば、日本の食文化がみえてくる。 

 29日まで。午前9時半~午後4時半。月曜日休館。入場料は一般600円、大学生250円、高校生以下は無料。

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