PR

ニュース プレミアム

【一聞百見】余命2カ月…がん乗り越え 奈良の四季を撮る 映像作家・保山耕一さん

「桜の撮影は一生かけても満足できない」と話す保山耕一さん=奈良市(恵守乾撮影)
「桜の撮影は一生かけても満足できない」と話す保山耕一さん=奈良市(恵守乾撮影)
その他の写真を見る(1/5枚)

 奈良の風に舞う花びら、荘厳な夕焼けと再び昇る太陽…。「余命2カ月」と宣告されてから約7年。がんを乗り越え、奈良の四季を撮影している同県生駒市の映像作家、保山耕一さん(57)の作品は一編の詩のように人の心を打つ。今年は新型コロナウイルス感染拡大の影響で苦境に立たされるアーティストとの絆も強めながら、日常の掛け替えのない美しさを伝えようとしている。

(聞き手・奈良支局 岩口利一)

コロナ下に自然が見せた本来の姿

 今夏、奈良市中心部の施設でピアノや二胡などの音楽とともに保山さんの映像が上映された。

 新型コロナウイルス感染の収束が見えない中、企画された「『桜咲く』音楽と映像のコンサート」。感染防止のため定員200席の会場は72席に限定され、時間も1時間に限られた。チケットはネットであっという間に完売したため、リハーサルも公開。華麗な桜の映像は訪れた人らに感動を与えた。「ライブなどが中止となる大打撃を受け、生活も大変なアーティストを支援したかったのです」。自身の上映会や講演も中止になって収入も減ったが、世話になってきたアーティストらのことが気がかりで仕方なかったという。

 そこで、奈良に縁のあるアーティストらから曲の提供を受け、自ら撮影した今年の桜の映像を収めたDVD「桜咲く」を販売。収益金をみんなで分け、さらに開催したのがこのイベントだった。「お金だけではアーティストの状況は変わらない。ずっと続けてきたことがコロナで窮地に立たされ、将来も語れない中、生の拍手に包まれてもらうことで支援したいと思ったのです」。会場では拍手がなりやまず、涙を流す観客もいて大好評だったという。

今春、吉野山を彩った桜を撮影した作品(保山耕一さん提供)
今春、吉野山を彩った桜を撮影した作品(保山耕一さん提供)
その他の写真を見る(2/5枚)

 「桜咲く」の撮影地は、同県吉野町の吉野山や十津川村の果無(はてなし)集落、御所市の橋本院、橿原市の大和三山。日に映え風に舞う花びらがこの世の美しさと、はかなさを思わせる。「ぼく自身、感染すると重症化するという自覚があって怖かったので、人が集まる場所にはいかないようにしました」。吉野山は意外と人が目立ち、感染防止のためにある旅館の一室から桜を撮影した。今年は多くの人が花見も楽しめない状況だったが、桜はひたすら美しかったという。「国内外の工場が止まった影響か、空の色が違い、雑草までがみずみずしく、生き生きとして見えた。桜も美しく咲き、そして美しく散っていった。皮肉にも、コロナのおかげで自然が本来の姿を見せてくれました」

続きを読む

あなたへのおすすめ

PR

PR

PR

PR

ランキング

ブランドコンテンツ