PR

ニュース プレミアム

【石仏は語る】気品高い如来坐像 地獄谷の石窟仏 奈良市

地獄谷の石窟仏
地獄谷の石窟仏
その他の写真を見る(1/2枚)

 柳生街道の滝坂道に点在する石仏群のひとつ、地獄谷石窟とも称され、凝灰岩(ぎょうかいがん)層が露出した石窟を形成しています。東窟には石仏を彫り出した痕跡がなく、空洞となっています。

 聖人窟と呼ばれる石窟は、高さ約2・4メートル、幅約4メートル、奥行き約3メートルの洞内にあって、その奧壁に高さ約1・7メートル、幅約1・2メートルの枠取りがされ、見事な如来坐像が線刻されています。

 中央の蓮華(れんげ)座は下弁7枚、上弁12枚の単弁が線刻、その蓮華座上に二重円光背を負い、結跏趺座(けっかふざ)しています。挙げた右手は指頭を合わせて施無畏印(せむいいん)を結び、左手は膝上に置き掌を上にして指を伸ばす与願印(よがんいん)としています。肉身部は衲衣(のうえ=僧衣)の複雑な線刻により、豊かな質量感を出し、胸部に吉祥紋の卍が刻まれます。

 像容は気品の高さを備えており、頭部の螺髪(らほつ)は多く、盛り上がった肉髻(にくけい)、眉間に白毫(びゃくごう)、面部の膨(ふく)よかな顔立ちに三道の線刻が深いため、生き生き感が見られます。全体的に彩色が施され、後世の再塗もありますが、奈良時代後期の作品です。

 左側には二重円光背を負い、蓮華座上に薬師如来とみられる像高約92センチの線刻立像があります。右手を右胸前に挙げ、指頭を合わせて施無畏印を結び、左手は垂らして掌を上に指を伸ばす与願印としています。衲衣は肉身部全体を包み複雑な線刻で表現されますが、腹前でひもを結ぶという表現はめずらしいものです。この線刻にも彩色が重ねられています。

その他の写真を見る(2/2枚)

 右側にも二重円光背を負い、蓮華座上に立つ十一面観音とみられる像高約87センチの線刻像があります。東側壁にも二重円光背を負い、蓮華座上に坐す妙見菩薩と考えられる像があり、右手に蓮華、左手を拳印を示しています。光背外には星座の表現があるようですが、明確ではありません。

(地域歴史民俗考古研究所所長・辻尾榮市)

あなたへのおすすめ

PR

PR

PR

PR

ランキング

ブランドコンテンツ