PR

ニュース プレミアム

新型コロナで一変した違法薬物事情 押収量減も依存症支援に影

その他の写真を見る(1/2枚)

 新型コロナウイルスの感染拡大が、違法薬物をめぐる状況に変化をもたらしている。コロナ禍で「供給」が滞った影響からか違法薬物の摘発は軒並み減少しているが、薬物乱用者が依存から脱却するのに重要な依存者らの集会が、新型コロナの影響で開けないケースも出ている。専門家らは「薬物の実態がより見えなくなっている側面もある」と懸念している。(吉沢智美)

押収量は激減

 財務省によると、今年上半期(1~6月)に全国の税関当局が押収した不正薬物の件数は339件で、前年同期比で41%減少した。形態別にみると、大幅に減ったのは航空便の旅客による密輸で、同74%減となる49件。担当者は「新型コロナの影響で海外との往来が制限され、持ち込めなくなった」と推測する。

 国際郵便を用いた密輸も同20%減となる247件で、商業貨物を用いた密輸も同35%減の43件だった。ただ、商業貨物のうち海上貨物は9件と、前年同期(5件)に比べ、ほぼ倍増している。担当者は「旅客による密輸は減っているが、海上貨物に切り替えるなど、あの手この手を試みようとしている実態は変わらない」とみている。

 また押収量をみると、覚醒剤は同79%減の約309キログラムで、大麻草も同82%減の約7キログラムだったが、コカイン(約87キログラム)と合成麻薬のMDMA等(約6万4千錠)は前年同期に比べて倍以上に増えている。

 財務省によると、MDMAについてはこれまで1件につき数百錠が持ち込まれることが多かったが、今年は数千錠単位のケースもみられるという。関係者は「一定の需要があることが影響しているかもしれない」と述べた。

集会開けず

 違法薬物の供給量が減っているのはプラスといえるが、マイナス面もある。

 全国に約2300人の会員がいる薬物依存者の自助グループ「ナルコティクス・アノニマス(NA)日本」も、新型コロナの影響を少なからず受けた一つだ。

 薬物依存者が集まって自らの経験を皆の前で話す集会を定期的に開いていたが、いわゆる「3密」の防止が叫ばれ始めた3月ごろから開催は減少。4月の緊急事態宣言以降は、会場となる教会などが使えず、全面的に中止に追い込まれた。

 最近は地方を中心に徐々に再開できるようになってきたというが、東京都心などでは、今も開催をためらう状況下にあるという。オンラインでのミーティングも行っているが、NA日本の担当者は「(集会は)人に言えないことを発散し分かち合うことで効果を生むもの。出掛けるための準備やミーティングが始まる前のちょっとした会話、終わった後に波長が合う人とお茶や食事をすることなども大切で、(オンラインでは)やはり空気感が違うし、対面にはかなわない」と打ち明けた。

3密、不要不急が必要

 専門家らもコロナ禍での対応に苦慮している。

 国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所薬物依存研究部の松本俊彦部長は、自助グループなどの対面でのミーティングが十分行えない影響について「依存症は『孤立の病』とされるが、その孤立感を癒やせず、再使用する人が増えたと感じている」と危惧する。

 同センターの薬物依存症外来でも、緊急事態宣言の発令中などに患者らが対面での受診をためらう傾向がみられたため、一時的に通院の間隔を空けたり、希望者には電話での診療を行うなどして対応した。ただ、電話診療では表情などが伺えず、状況を正確に把握できない場合も少なくなかったという。

 松本部長は「オンラインでのミーティングを増やすことは大切だが、リアルよりは効果が落ちる。依存症からの回復に必要なのは『3密』と『不要不急の(ミーティングへの)外出』だ」と話した。

あなたへのおすすめ

PR

PR

PR

PR

ランキング

ブランドコンテンツ