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コロナ・バブル? 地方競馬、売り上げ絶好調の意外な理由

馬が重りをのせた鉄ソリを引いて力とスピードを競う「ばんえい競馬」(帯広市提供)
馬が重りをのせた鉄ソリを引いて力とスピードを競う「ばんえい競馬」(帯広市提供)
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 新型コロナウイルスの感染拡大であらゆる「レジャー」が思うよう楽しめない中、馬券の売り上げが好調だ。特にインターネットでの販売が主流となっている地方競馬の売り上げの伸びは目覚ましく、4~9月末は前年同期比で1・3倍以上の約4537億円にもなった。近年、「地方競馬は勝ち馬を当てやすい」と注目度が高まっていたところに、コロナ禍でさらに弾みがついた形だ。ただ、施設の老朽化に悩む地方競馬場からは「言うほどもうかっていない」との声も漏れてくる。

(文化部 三宅令)

歴代最高も視野

 地方競馬の売り上げは絶好調だ。映画や劇場などあらゆる娯楽が「不要不急」とされ、エンターテインメント業界が中止や延期で甚大な影響を受ける中で、競馬は無観客ではあったが、多くが通常通りの開催を続けた。

 レジャーでの外出が控えられた4~7月末は、中央競馬の売り上げは堅調。一方、地方競馬の売り上げは3112億8914万円で、前年同期比33・1%増を記録した。競馬場や場外施設での現金発売が年間売り上げの約3割を占める中央競馬と違い、地方競馬はもともとインターネットでの馬券購入者が多いことが影響したとみられる。

 開催中止となった競輪や営業自粛を求められたパチンコなどからの流入も多かったとみられる。自粛状態がやや緩み、人出が増え始めた後も、8月は約720億円(前年比24・7%増)、9月は約705億円(同43・3%増)と順調に伸びている。

 地方競馬全国協会の広報担当者は「楽観視はできないが、歴代最高の売り上げも視野に入ってきた」と話す。地方競馬の売り上げは昨年度、22年ぶりに7千億円の大台に乗ったが、今の勢いが続けば今年度は9千億円到達も夢ではない。約30年前に記録した平成3年度の約9862億円を超える可能性もある。

ステイホームが追い風?

 かつては人気が低迷し、存続自体が危ぶまれた地方競馬だが、馬券のネット発売を導入し、全国のファンが購入するようになったことで盛り返した。

 「万馬券が出にくいという人はいるけれど、買い方次第。地方競馬はいいよ」と、大阪府吹田市に住む会社員男性(40)は話す。中央競馬と比べ、在籍する馬が限られ、1レースの出走頭数が少ない。また、馬の実力差が大きいので勝ち馬を予想しやすいという。「人気馬すなわち強い馬なので、初心者向けかな」

 19年から全主催者の全競走を発売している「楽天競馬」の広報担当者は、「会員数は以前から増加傾向にあるが、ステイホーム期間中の4~5月は特に伸びが顕著だった」と話す。会員は楽天競馬サイトを利用して馬券購入ができる。年齢層別にみると、前年同時期と比べて新規会員で最も多いのが20代だという。「コロナ禍で場外施設、競馬場での購入層がネットに移行したというより、新規競馬ファンが増えたと考える方が自然かもしれません」

それでも儲けが少ない理由

 「“コロナ・バブル”とは心外ですね。言われるほどもうかってはいません」と話すのは、北海道帯広市の帯広競馬場を所管する、市ばんえい振興課の担当者だ。帯広競馬場は世界で唯一、馬が重りを載せた鉄ソリを引いて力とスピードを競う「ばんえい競馬」を開催している。

 帯広競馬場も、歴史的な売り上げ増を記録している。4月~9月末の売り上げは前年同時期比約60%増。令和2年度の開幕日である4月24日には、ばんえい競馬が同市単独開催となった平成19年以降で歴代最高の5億9233万円を1日で売り上げた。

 ただ、市はこの状態を手放しで喜んでいるわけではない。同課の担当者は「実際の収入はそのうち数%だけ」と説明する。売り上げのうち、75%は払い戻しに充てられ、ネット販売会社の取り分は10~15%にも上る。

 施設維持費に回す分も必要だが、老朽化した施設の建て替えは思うように進んでいない。「いくらネット発売が好調でも、手数料負担がある。このまま『現金発売』が伸びないと厳しい」という。さらに、現状はコロナ禍による一時的な人気の可能性もあり得るとみる。「競馬自体の魅力で売り上げが伸びたわけではないので、もろ手を挙げて喜べない」と複雑な反応だ。

 地方競馬に詳しい北海学園大学経済学部地域経済学科の古林英一教授は、「ネット発売がなければ廃止に追い込まれた競馬場も出てきただろう」とした上で、「現在の地方競馬の売り上げは一種のバブルのようなもの。これからどうファンを定着させ、競馬場に呼び込むかが課題だ」と指摘した。

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