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【田村秀男のお金は知っている】コロナ禍にのしかかる消費税増税の重圧 現金一律給付にもかかわらず消費者態度指数の回復は弱々しい

 カネ余り、コロナの秋である。日銀統計によると、9月の現金と、預金通貨と呼ばれ、いつでも現金に換えられる普通預金、当座預金の合計額(金融用語でM1と呼ばれる)は914兆円で、新型コロナウイルス感染が始まった3月に比べて84兆円も増えた。史上空前の増加ぶりである。

 昨年の国内総生産(GDP)を基準にするとその1・7倍近い。といってもピンと来ないかもしれないが、米国と比較すればよい。クレジットカード社会の米国は、さほど現金を必要としないのだが、コロナ対策の大掛かりな財政出動に伴いM1は急増した。それでもGDP比率は25%程度に過ぎない。

 総合預金口座の預金通帳を眺めながら、しめしめこれだけ残高が増えたぞ、と悦に入るのはよいとしても、あくまでも個人ベースの話である。

 国全体の経済を考えると、それだけ現金と現金同様のおカネだけが膨らむだけで、物や飲み食いに回らないのだから、景気は沈む。メーカーも、卸・小売業、旅客関連、レストラン、居酒屋も、これじゃやっていけない、と廃業したり、店をたたんだりする。そうなると雇用機会は失われていく。年末が心配だ。

 やっぱりコロナのせいだな、世の中変わったんだからね、としたり顔でカミさんが言う。だってオフィスに行かなくても済むテレワークに慣れたし、職場の仲間との居酒屋での飲み食いはしなくても別に構わないじゃない。若者はホテルの宴会場での華やかな結婚披露宴もやめて費用を節約して、銀行口座におカネを貯めておいたままにしたほうが、新婚生活が安定すると思い直しているんだよ。

 じゃ、何だ。本当にコロナで世の中様変わりなのか。カネはあっても使わない、という具合なのかね、と問い返す。それじゃ、ずっとこのまんま日本経済は停滞を続けることになるね。それでも構わないのかね。

 ここでグラフを見よう。上記のM1、つまり現金と現金同様の預金(わが家計では普通口座だけ)の3カ月前比の増減額と消費者態度指数を組み合わせた。消費者態度指数とは内閣府が毎月算出している。それは暮らし向き、収入の増え方、雇用環境、耐久消費財の買い時判断という消費者の意識を示したものだ。

 M1は6月に66兆円増と爆発的に膨張した。9月もさらに増えた。6月の急増は、政府による総額13兆円規模、国民1人当たり10万円の現金給付効果が含まれるが、M1はその4倍近い。家計はそれを普通口座にとどめ、企業は銀行借り入れを増やして当座預金に上積みしたことも大きな要因だろう。

 そして7月以降、家計はエアコンの買い替えなどに使った。企業従業員売り上げの補填(ほてん)に回し、何とか事業を維持できたのだろう。その結果、9月には消費者態度指数が6月に比べて上向いたというわけだが、重要なのは昨秋の消費税増税後、態度指数は大きく落ち込み、現金一律給付にもかかわらず回復は弱々しい点だ。消費税増税ショックはコロナ対策の効力をそいでいるのだ。(産経新聞特別記者・田村秀男)

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