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【田村秀男のお金は知っている】非正規男子の未婚にみる「国勢」の衰え 従来の「内需圧殺策」放置で進む困窮化

 5年に1度実施される国勢調査。今回はインターネットでさっさと回答できたのはよかったが、改めて気になったことがある。「国勢」とは、国力を担う人力を意味する。政府はいったい、このオールジャパンの調査結果を政策にどう生かしてきたのだろうかと。

 これまでの国勢調査を踏まえたとおぼしき政策は以下のような流れである。少子高齢化や生産年齢人口減が進んで、社会保障費が膨らむのだから、その財源は消費税増税で賄い、歳出削減によって財政均衡を図る、という具合である。

 経済の再生は外需頼みで、日銀は異次元緩和によって円安を維持する。景気対策は一時しのぎの補正予算で済ませ、基本は緊縮財政路線とし、あとは規制緩和を柱とする成長戦略というわけだ。

 以上の3本柱で構成したのがアベノミクスだ。菅義偉政権はそれを前進させるという通称「スガノミクス」を打ち出したが、要は3本目の柱に重点を置いた「規制改革」である。消費税増税は今後10年間はやらない、という安倍晋三前首相の発言を踏襲するが、消費税減税を否定している。

 ここでグラフを見てほしい。2015年の国勢調査と厚生労働省の賃金構造基本調査(19年)結果から、男子について、正規、非正規雇用の年収と未婚率を抜き出し、組み合わせた。国の勢いを支えるのは男女を問わず30歳代から40歳代の働き盛り世代であり、結婚して家庭を築き、子供たちを育てていくというのが正常な姿だろう。

 よくも悪くも男性優位の日本社会ではとりわけ男性側の収入が結婚する機会を左右する。かなり前のことだが、女性評論家の某氏によれば「東京では若い女性は年収500万円以上ない男とは結婚しないのよ」と聞いたことがある。確かに、独身中年の男たちはいずれもその基準に達していないケースを正規雇用でも耳にするが、正規、非正規の間の収入と結婚に関する格差は恐るべしである。

 非正規雇用者の未婚率は30歳代後半で71%、40歳代後半になっても57%にもなる。年収はいずれも300万円にはるか及ばない。

 総務省の労働力調査によれば、今年7月時点での男子の非正規雇用は35~44歳で598万人に上る。未婚率を65%とすれば、約390万人もの青壮年男性が独身のままなのだ。

 もちろん、安倍前政権もこの実態は掌握していて、内閣府でもいくつか非正規未婚を取り上げた報告書をまとめている。正規雇用の促進や賃上げも経済界に要請してきた。しかし、最も肝心なのは経済政策、ことに財政政策である。外需頼みの一方で消費税増税や緊縮財政を繰り返して内需を圧殺すれば、賃金上昇率から消費者物価上昇率を差し引いた実質賃金上昇率は正社員だってマイナスになっている。パート、派遣など非正規社員となるとはるかに困窮化する。

 スガノミクスが従来の内需圧殺策を放置したままでは、今回の国勢調査が示すと予想される国力の一層の衰退を止められないだろう。 (産経新聞特別記者・田村秀男)

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