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【熊木徹夫の人生相談】生きている意味が分からない

イラスト・千葉真
イラスト・千葉真

相談

 30代、フリーターの女性。生きている意味が分かりません。死んでも構わないと毎日、思いながら生きています。

 毎日同じことの繰り返しでつまらない、なんか意味があるのかなと思い始めたのは小学5年の時です。30代になってもその思いは変わりません。

 私をかわいがってくれていた母は10年前に病気で亡くなりました。父は私に「子供が欲しいわけではなかった」と言ってのける人です。父からは母ほどの愛を感じられません。

 数年前、プロポーズしてくれた人がいました。彼の親に「お父さんに会いたい」と言われたのに、父は「実家暮らしの男とは結婚するな。結婚したらいじめられる」と言い、会うのを拒否し続け、私は彼に振られました。

 毎日毎日疲れました。

回答

 「生きている意味が分かりません」

 この言葉、私の日々の精神科臨床でも、たびたび聞かれる言葉です。患者さんは遠い目でご自分の来し方を振り返りつつ、最後にため息を一つつきながら、こうつぶやく。あなたのおっしゃるこの言葉にも、独特の複雑なニュアンスをはらんでいるはず。それを腑分けしてみましょう。

 子供時代、お母さんに慈しまれたことは、あなたの人生の大切な資産です。しかしそれだけに、かけがえのない人との突然かつ永遠の断絶に遭遇したならば、その苦しみはただごとではない。あなたは人生の不条理に慄然とし、絶望の淵にあえいだであろう。幼少期から生きてあることの意味が理解できなかったとのことですが、それがはっきり確信に変わったのはおそらくこの時点でしょう。

 それ以降の誰かからの愛が感じられない生活は、苦渋の毎日であったはず。プロポーズはこの桎梏(しっこく)から解き放たれる最後のチャンスだと考えていたのに、それを父に潰されてしまった。その深い失望はいかばかりか。

 一方で幸せに生きている人とは、どのような人か。彼はそもそも生きる意味など考えない。時間の経過さえも意識しない。それに対しあなたは、日々を、いや一秒一秒を、意識を研ぎ澄ませ、息を殺してやり過ごそうとしてきた。それゆえ、せめてそこに意味を見出(みいだ)そうとしないわけにいかない。

 このようなあなたに、私は適切な処方箋を施しえない。しかし、私に相談を持ちかけられたということは、絶望の極にあってなお、希望を見出したいという願いがあるのだと思いたい。あきらめなければ、いずれまたあなたの前に“蜘蛛(くも)の糸”が垂れ、誰かと愛が通じ合う時が来る、私はそう信じています。

回答者

熊木徹夫 精神科医。昭和44年生まれ。「あいち熊木クリニック」院長。著書に「自己愛危機サバイバル」「ギャンブル依存症サバイバル」(ともに中外医学社)、「精神科医になる~患者を〈わかる〉ということ~」(中公新書)など。

相談をお寄せください

 住所、氏名、年齢、職業、電話番号を明記のうえ、相談内容を詳しく書いて、〒100-8078 産経新聞「人生相談 あすへのヒント」係まで。

 〈メール〉life@sankei.co.jp

 〈FAX〉03・3270・2424

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