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【経済インサイド】ソニーが狙う次の10年トレンドは「モビリティー」

 ソニーは電機大手8社で、この10年の間に唯一、営業利益率10%を達成している。エレクトロニクス事業の不振で、2009年度から14年度までの6年で5度も最終赤字を計上したが、18年3月期に20年ぶりに営業最高益を更新し、復活を印象付けた。

 立役者は13年12月に子会社のソネットから本体の経営に参画した吉田氏と十時氏だ。スマートフォンの普及に伴い、CMOSイメージセンサーに集中投資。一方でテレビ事業の分社化やパソコン「VAIO」の売却など構造改革を矢継ぎ早に打ち出し、事業の「選択と集中」を推進した。従来のハードの売り切りから、ゲームや音楽、映画などソフトの配信で稼ぐ「リカーリング」(継続課金サービス)モデルも取り入れた。

 一連の構造改革の起点は、インターネットというメガトレンドに乗り遅れた苦い経験だ。ソニーはネットを軽視し、2000年代に深刻な打撃を受けた。その頃、ソネットに出向していた吉田憲一郎社長兼最高経営責任者(CEO)と十時裕樹副社長兼最高財務責任者(CFO)はネットで世界が変貌する姿を目の当たりにした。ソニーが業績の立て直しに奔走している間に、「GAFA」と呼ばれる米国の巨大プラットフォーマーが多大な利益を獲得するビジネスモデルを確立するに至った。

 世界で戦う収益力を回復した今、次のメガトレンドは逃さない。VISION-Sの発表は、そうした強い意思の表れとも読み取れる。

 そのための組織変更も決断した。来年4月に63年ぶりに「ソニーグループ」に社名を変更。ソニーグループは本社機能に特化し、傘下に祖業のエレクトロニクス事業をはじめ6つの事業会社を置くことにしたのだ。

 高収益企業に転換したソニーも、新型コロナウイルスの感染拡大には抗(あらが)えず、21年3月期の営業利益は前期比27%減の6200億円を見込む。その最中に発表された組織変更によって、ソニーは事業会社6社によってリスク分散する「複合経営」を強める姿勢を鮮明にした。

 だが、社名を変えてまで組織を変更するのは「守り」のためだけではない。真の狙いは、インターネットのメガトレンドに乗り遅れた過去の反省を踏まえ、本社が腰を据えて長期的な戦略を描くことにある。本社が主体的に新規事業を探し、自社のテクノロジーを組み合わせることで次世代に向けた種まきを行うのだ。

 みずほ証券の中根康夫シニアアナリストは「吉田氏は本体を客観的に見る視点を持っている。違う事業間のシナジーの存在を経験から確信している」と評するが、組織変更にはグループの潜在力を最大限に引き出し、メガトレンドに挑む強い思いがにじむ。

 その意味で、半導体とエレキを組み合わせたVISION-Sはソニーグループの象徴ともいえる。長年培ってきたテクノロジーをどう生かし、事業化するのか。モビリティーへのアプローチは大きな試金石となる。(経済本部 黄金崎元)

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