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【ザ・インタビュー】「生と死、自分ごとで考えて」 作家・海堂尊さん新作「コロナ黙示録」

「コロナ黙示録」を上梓した作家の海堂尊さん(酒巻俊介撮影)
「コロナ黙示録」を上梓した作家の海堂尊さん(酒巻俊介撮影)
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 お騒がせコンビが帰ってきた。映像化作品も多い「チーム・バチスタ」シリーズの心療内科医・田口公平と、厚生労働省の技官・白鳥圭輔が今回向き合うテーマは、収束の兆しが見えない新型コロナウイルス。進行形の話題を扱い“世界初の新型コロナウイルス小説”と銘打つ作品で、医師でもある作家が提示するのは-。

 「日本で騒ぎになりだした1~2月には、まったく考えていなかった。4月7日に緊急事態宣言が発令されたときに“書けるかな”と思った。日本だけでなく、世界中の普遍的な事象であり、コロナを題材にした物語があっても不思議ではない…」

 1章に1日が割り当てられた物語では、その時々に医療現場で起こっていたであろうことが描かれ、世界での感染者数が併記された。制御不能の感染症パニックに翻弄される政権中枢の“内幕”もリアルだ。政官界の実在する人物と思われるキャラクターの言動は、昨年11月から今年5月まで、事実と側聞に、想像と笑いを交えて描かれる。

 7月10日刊行だが、「本当は6月末までに出したかった」という。対策が後手後手になった政府や東京都の対応を記すことで、東京都知事選(7月5日)の判断材料になれば…との思いがあったからだ。そのため執筆を急いだ。書き始めている候補作を常に2~3本、用意するのが執筆スタイルなのに、ほぼゼロからのスタート。「締め切りを設定したのは初めて。大変な思いをしたので二度とやりたくない」と苦笑する。現実に即し、過去作にも登場した「北海道知事」が、政府より先に緊急事態宣言を出し、医療連携を作ったことに一定の評価を与える。

◇  ◇

 海堂作品の特徴は、架空の地方都市を舞台の中心に据え、同じ人物が登場するのに違う物語として展開していくことだ。人物だけでなく、平成23年刊行の「極北ラプソディ」に出現したドクターヘリの進化版、ドクタージェット(機)も今回、重要なアイテムになっている。

 医師でもある作家は、読者に自分ごととして一つの選択を迫る。医療機器が1つしかないのに、救わねばならない患者が2人いる状況。さて、どちらの命を優先するか、と。

 「ニュースで医療現場が報道されると、大変だなあとか、ありがたいこととか思うけれど、どこかひとごとの面がある。でも入院したり、周囲に感染者がいたりしたら、それは自分ごとになる。物語を読むと登場人物の誰かに感情移入する。自分のこととして、本気で考えるんです」

◇  ◇

 「書くことは趣味。趣味だから大変じゃない」と、作家という職業に独特のスタンスを持つ。小学生のころ、誰でも1冊は物語を書ける-という趣旨のことを耳にした。読書好きだった海堂少年は、毎日立ち寄る近所の書店の棚に、自分の作品が1冊置いてある将来を夢想した。高校や大学のときにも原稿用紙10枚くらい書くことがあったが、それ以上続かない。「今はそのときじゃない。だから挫折ではない。(1冊書けるのは)もう少し先かなと思っていた」

 2~3年に1度、書きたい熱が高まり、そのたびにトライする。心筋症に対するバチスタ手術のアイデアを思いつき、まとまった分量が書けたのは44歳のとき。『このミステリーがすごい!』大賞に応募すると大賞に輝いた。52歳まで病理医と兼務しながら、時間をみつけては書いた医療エンターテインメント作品を、世に送り続けた。

 「小中学生のときに私の作品を読んで、医学部に入った、医者になった-という声も聞く。書いてよかったな、と思います」

 いまは書くことが仕事…とも思っていない。「趣味だから。楽しいですよ」

3つのQ

Q子供の頃好きだった本は?

「ファーブル昆虫記」、「シートン動物記」、「シャーロック・ホームズ」など。漫画なら「ドカベン」「がきデカ」「マカロニほうれん荘」

Q体を動かすことは好き?

以前はスポーツジムに通っていたが、いまは1時間の散歩。冬場は(新潟県の)湯沢あたりへスキーに行く

Qゲバラやカストロに興味を持ったのは?

テレビの取材でキューバに行ったのがきっかけ。その後、チリやボリビアなど中南米の国々も取材やプライベートで行った

(文化部 伊藤洋一)

     

 かいどう・たける

昭和36年、千葉県生まれ。外科医、病理医を経て平成18年「チーム・バチスタの栄光」で第4回「このミステリーがすごい!」大賞を受賞し作家デビュー。「ジェネラル・ルージュの凱旋」、「ブラックペアン1988」など医療現場を扱った作品のほか、近著にキューバ革命指導者の生涯を描いた「フィデル出陣」など。

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