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【一聞百見】紙は千年、デジタルに勝つ 工房レストア社長 平田正和さん 

「資料を残しておきたい人のお手伝いを」と話す平田正和さん=大阪市大正区の工房レストア(南雲都撮影)
「資料を残しておきたい人のお手伝いを」と話す平田正和さん=大阪市大正区の工房レストア(南雲都撮影)
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 古文書やびょうぶ絵から映画のポスター、賞状まであらゆる紙媒体の修理や修復を引き受ける工房レストア(大阪市)。「紙製文化財の町医者」を名乗る社長の平田正和さん(47)は、だれかが「残しておきたい」と思えるものは文化を伝える立派な地域史料になると言う。歴史と思い出が刻まれた紙々は、静かな工房で傷を癒やして持ち主の元へ帰る。

(聞き手・粂博之編集委員)

■残したい気持ちお手伝い

 関西のある自治体から預かった古いびょうぶ。表面をはがすと、本来は使われないはずのくぎの頭が現れた。昔、だれかが補強のために使ったらしい。

 「ちょっと手荒な作業ですね。その場しのぎかもしれないが、後世に残すために良かれと思ってやったことでしょう」。平田さんは、絵を裏返しにして作業台に置き、霧吹きで軽く湿らせた。そうすると補強用に「裏打ち」された和紙の張り替えがしやすくなる。

 「古いものには『可逆性』がある。修繕しながら長く使うことを前提にした作りになっているんです」

 先人の知恵に従いながら、自分なりに工夫した道具も使っての作業。ただ、文化財などの場合、オリジナルを損なうような付け足しはタブーだ。例えば、絵の一部で色がはげ落ちていても塗り足したりはしない。古びた雰囲気はそのままに、展示や鑑賞に耐えられる状態にするのが、工房の仕事だ。

 オリジナルになじむ色合いの紙を漉(す)くため紙繊維の調合比率を記したレシピと見本、再利用するために取り置いた古い裏打ちの紙片、粘着力を調整するために10年以上発酵させた正麩(しょうふ)糊…。工房内には、さまざまなノウハウと材料が詰め込まれている。「持ち込まれるものは、それぞれ保管状況も状態も違っています。同じ手法がいつも通用するとはかぎらない」。作業のたびに反省点はある。しかし「想定外のことに対応しながら経験を積むことで腕は上がる」。

 平田さんがこの道に入ったのは19歳のとき。大学受験に失敗し、友人の親戚が経営する兵庫県尼崎市の表具店でアルバイトをしたのがきっかけだった。ふすまやびょうぶなどを扱う仕事。「半年で辞めるつもりだった」が、技術を覚えるうちに「これをゼロにするのはもったいない」と本腰を入れた。店には修復部門もできた。しかし、35歳のときに店は倒産。顧客を引き継ぐかたちで独立した。

(次ページは)紙は千年…

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