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【知っておきたい伝統芸能】三大遊郭の風情描く華やかな舞踊、しゃれっ気溢れるラスト

「戻駕色相肩」で浪花の次郎作にふんする市川右團次
「戻駕色相肩」で浪花の次郎作にふんする市川右團次

 江戸の吉原、京の島原、大坂の新町。いずれも江戸時代、「三大遊廓」として栄え、さまざまな文化が花開いた土地である。

 そして、歌舞伎など伝統芸能の物語の舞台ともなった。吉原は「助六」や「籠釣瓶花街酔醒(かごつるべさとのえいざめ)」。新町は「封印切(ふういんきり)」「廓文章(くるわぶんしょう)」、現代歌舞伎の女形の最高峰、坂東玉三郎の当たり役「壇浦兜軍記(だんのうらかぶとぐんき)」の傾城、阿古屋(あこや)は、京の五条坂の遊女という設定だが、描かれた風俗は島原を映したもの、といわれている。

 いずれも、廓に生きる遊女とその恋人の物語。遊廓は、夜になっても不夜城のようにまばゆく輝いて見えてはいても、「遊女は売り物、買い物」といわれたように苦界に生きねばならなかった彼女たちの悲しみ、苦しみ、そして本物の恋と出会ったときの喜びは、命さえ引き換えにできるほどのものであったのだろう。そこにはぎりぎりで生きていた男と女のドラマがあった。だからこそ、舞台芸術に昇華され、現在まで不変の命を保っているのではないだろうか。

舞踊で知る遊郭の風情

 三大遊廓の風物をすべて読み込んだ華やかな日本舞踊がある。

 「戻駕色相肩(もどりかごいろにあいかた)」。昨年12月、京都・南座の顔見世で上演され、今年も9月11日から13日まで、大阪城公園内のクールジャパンパーク大阪・TTホールで、市川右團次(うだんじ)さんらの出演で上演される。

 それほどよく上演される理由のひとつは、現代の私たちが見ることのできない、かつての遊廓の風情を舞踊を通してうかがい知ることができるからではないだろうか。

 舞台は桜満開の京の紫野(むらさきの)。駕籠(かご)かきの男たちが駕籠を担いでやってくる。ひとりは色白の二枚目、吾妻の与四郎(よしろう)、もうひとりは腕っぷしの強そうな浪花の次郎作。駕籠の中から人形のように愛らしい赤い振り袖姿の禿(かむろ)、たよりが首をかしげて現れる。

 禿というのは、花魁(おいらん)に付いて雑用をこなしながら廓の礼儀作法を修得する少女のこと。成長すれば遊女になる運命だった。たよりは、ここでは島原の小車太夫の禿という設定である。

 3人そろうと、江戸の錦絵から抜け出たような華やかさ。粋な常磐津節(ときわづぶし)にのって、与四郎は吉原、次郎作は新町、たよりは島原の廓の様子を踊りで披露する。これが何ともしゃれっ気があって楽しい。

 しかも、この舞踊には奇抜な趣向がある。浪花の次郎作は、実は大盗賊の石川五右衛門、吾妻の与四郎は、実は真柴久吉(ましば・ひさよし 史実の豊臣秀吉)。ラストでふたりは本性を現す。当時の人たちは、このしゃれっ気をも、おおいに楽しんだのであろう。今作が初演されたのは江戸・天明8(1788)年、庶民文化が豊かに花開いた時代であった。

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