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【山本一力の人生相談】金銭トラブル隠す母 どう受け止めれば

相談

 80代母と2人で暮らす50代女性。母が知人に10年間で3000万円を貸していました。民事裁判で和解しても、ほとんど返済されず、そればかりか、知人は私の留守中を狙って「すぐに返すから」と母に電話し、母も応じて送金していました。電話を偶然耳にして気づきましたが、母に確認しようとしても、貝のように黙るか、嘘を言い、私の言葉に耳を貸そうとしません。

 お人よしで、頼まれたら嫌と言えない母ですが、お金には細かいところもあります。縁を切ると、貸したお金が返ってこなくなると思っているのかもしれません。

 母には何でも正直に話してほしいという気持ちがまだあり、嘘をつかれると残念で冷たく接してしまいます。どうすればいいのか分からなくなりました。アドバイスをお願いします。

回答

 実母を「おひとよし」と思うことで、気の安らぎが欲しいのだろうと拝察する。

 醒(さ)めた目で断ずるが、まずはあなたの母は認知症ではないかを疑うことだ。が、わたしは医療には素人だ。認知症とは無縁と想定して、本稿を進めさせていただく。

 この母は感謝もせず、都合がわるいと黙り込むことで張り合う。挙(あ)げ句には我(が)を押し通す、わがまま者ではないのか。

 昨今の幼児へのひどい事例を知るにつけ、母は2種類だと思えてならない。

 子のためなら、わが身をも捨てる覚悟のある母と、なによりも自分が一番、やりたいこと最優先の母。この2種類だ。

(1)息子の不行跡に悩む母は、近所の親爺(おやじ)が口にした言葉にすがった。

 「上野・不忍池に21日間、どじょうを放したらどうか。生き物を助けた功徳で、息子は立ち直るかもしれない」

 母は真冬の氷雨も厭(いと)わず、銀座から上野まで出向き続けた。18日目の朝、息子はその親爺から子細を聞かされた。急ぎ追い、池に放つ姿を見て、息子は改心した。

(2)娘の小学校卒業式と、商業組合の招待旅行とが重なった。母は卒業式など一顧だにせず、旅行に参加。式のあと、クラス仲間は明日からの別離を思い、涙した。

 母の姿なしを哀(かな)しんだ娘の涙の真意は、級友のだれも理解できていなかった。

 不条理きわまりないが、相談者も式後に涙した女性も、感謝のない母の世話を、いまも担っている。ならば、どうするか。

 母には求めず、が最善策だと思う。

 あなたの母はここまで、身勝手を自己増殖させてきた。いまさら治りはしない。

 求めず、自分の誇りを傷つける挙には及ばぬ生き方の貫徹を、支えにされたい。

 黙り込むは、この手合いの必勝手段だ。

回答者

山本一力 作家。昭和23年生まれ。平成9年「蒼龍」でオール読物新人賞を受賞しデビュー。14年「あかね空」で直木賞受賞。近著に「牛天神 損料屋喜八郎始末控え」(文芸春秋)、「長兵衛天眼帳」(角川書店)、「ジョン・マン7 邂逅(かいこう)編」(講談社)、「後家殺し」(小学館)など。

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