PR

ニュース プレミアム

【熊木徹夫の人生相談】なぜ?父が盗みを やめさせるには 

相談

 70代の父の万引に悩んでいます。父は母と2人暮らしで、持ち家も車もあり、アルバイトもして生活には困っていません。しかし昔から盗癖があり、今も食品などの万引を繰り返して、スーパーで出入り禁止になっています。

 本人は耳が遠く、吃音(きつおん)もあるため、母が毎回迎えに行って平謝りして帰してもらっているとのことです。最近は癇癪(かんしゃく)持ちになり、常に母に小言を言い、怒鳴ることもあるようです。母の心労も心配です。

 父は仕事を一生懸命に勤め、お酒も飲まず、ギャンブルもせず、趣味もなく家族に尽くしてくれました。感謝しなければいけないと思うのですが、父の万引が知られたら主人や婚家に顔向けができません。やめさせるにはどうすればよいでしょうか。(40代、主婦)

回答

 ある種の認知症に、その人の内なるモラルが壊れたかのような言動に及ぶものがあります。乱暴狼藉(ろうぜき)を働いたり、盗みを繰り返したり。しかし、あなたのお父さんの盗癖は昔からのものならば、これには当たらない。とすれば病気ではなく、生来の“手癖の悪さ”ゆえか。いずれにせよ彼の言動を変えるのは容易ではない。しかし、もっと他に目を向けるべきものがある。それを話しましょう。

 彼は万引さえなければ、本当に良い父親なのでしょう。あなたのご説明から、これまで質素に堅実に家族を支えてきた彼の生き様(ざま)が浮かび上がってくる。それは、いつも彼の傍らにいて尻拭いをして回っているあなたのお母さんも、同じ印象を持っているに違いありません。本来なら彼に感謝を表明したいのに、まるで実家における恥部であるかのごとく思っている自分がとても歯がゆい。また、この盗癖ゆえ晩節を汚してしまうかもしれない彼の立ち居振る舞いに危惧を抱いているといったところでしょうか。

 彼の言動を変え難いことについては、実はあなたも先刻承知でしょう。それにも関(かか)わらず、あなたが「(盗みを)やめさせるにはどうすればよい」かと言うのは、質問ではなく慨嘆(愁い、嘆くこと)とでもいうべきか。

 一番重要なこと、それは“あなたの心の安寧”です。世間は彼を善悪で切り捨てることがあるかもしれないが、あなたと彼の関係はあらゆる恩讐(おんしゅう)を超えた地平にあると居直るべきです。

 すなわち「今後何が起きようと、彼は私の大事な父である」ということです。仮に夫や婚家には平謝りでも、彼の人間性およびその名誉を今後もずっと信じていけるのは、あなたしかいない。そしてそれこそが、何よりも大切な娘の役割なのです。

回答者

熊木徹夫 精神科医。昭和44年生まれ。「あいち熊木クリニック」院長。著書に「自己愛危機サバイバル」「ギャンブル依存症サバイバル」(ともに中外医学社)、「精神科医になる~患者を〈わかる〉ということ~」(中公新書)など。

■相談をお寄せください

 住所、氏名、年齢、職業、電話番号を明記のうえ、相談内容を詳しく書いて、〒100-8078 産経新聞「人生相談 あすへのヒント」係まで。

 〈メール〉life@sankei.co.jp

 〈FAX〉03・3270・2424

あなたへのおすすめ

PR

PR

PR

PR

ランキング

ブランドコンテンツ