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【一聞百見】コロナも災害も…奈良の寺から広がる支援 松島靖朗・NPO法人おてらおやつクラブ代表理事

 おもしろいエピソードがある。ある子供のメールに「和菓子はもういいのでポテトチップスをお願いします」とあった。「それ、まさに私が子供のときに祖父に言っていたことでした。どら焼きはいいからポテトチップスを買いに行こうって。小さな出来事ですが、子供が子供らしいことを言えるということがうれしい。小さくてもそんな積み重ねを作っていきたいのです」

■孤立させず困難に寄り添う

 「この支援がなければ心が折れていたかもしれません」。NPO法人おてらおやつクラブが発行するフリーマガジン「てばなす」には、そんなお母さんの切実な声が紹介されている。支援家庭は北海道から沖縄まで。お寺の「おそなえ」を「おさがり」として配る「おすそわけ事業」は、そうして実績を積んできた。

 6月末にホームページに掲載された「2019年度 インパクトレポート」によると、昨年度のおすそわけ発送数は前年度比で23・6%増、寄贈物資の重量は約2・6倍、寄付金額は約2倍に。まるで企業の経営報告書さながらの内容だ。

「緊急の支援要請が増えました」と話す松島靖朗さん=奈良県田原本町(寺口純平撮影) 
「緊急の支援要請が増えました」と話す松島靖朗さん=奈良県田原本町(寺口純平撮影) 
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 「これまで多くの応援をいただいてきています。その力がどうなっているのか、目的がどれだけ達成できているのか。客観的にまとめ、だれがみてもわかるように情報発信する責任があると考えています」。いわく、おすそわけ事業が生み出す社会的価値と成果を可視化し、ステークホルダー(利害関係者)への説明責任につなげる-。お坊さんというよりはビジネスマンと話をしている気分になるが…。「われわれ自身のためでもあって。お布施もそうですが、お坊さんのやっていることってよくわからないというイメージが強いでしょう?」と苦笑。活動を始めたころ「お坊さんもたまにはええことをするんやな」といわれたそうだ。なんとも世間の期待値は低かったのである。

 成果の一つが直接支援家庭の増加。前年度に比べて世帯数は5割も増えた。「テレビで活動をみて知った」「ネットで検索して見つけた」など、いかに必要とされているかがわかる。興味深いのは、経済面だけでなく精神的な支えにもなっていることだ。お寺からの援助で「守られている感じがする」「ひとりじゃないと思える」といった声が多かった。

 「単に物を送っているだけではないんです。私たちが考える貧困とは、経済的困窮と孤立(社会的孤独)が合わさったもの。孤立して困りごとが解決できない家庭も多いのです」と松島さん。調査によると、クラブの支援を受けることで社会との連帯感が7割以上向上したという。「不思議なのは、実際、お母さんたちと顔を合わせることはほとんどないということ」という松島さん。だからこそ話せる、寄り添えるということもあるのかもしれない。

 今後の課題は、少し頭打ちになってきた賛同寺院をさらに増やすこと、そして大きくなっていく活動を支える体制を構築することだ。「経営課題が出てきましたね」と笑う。

 新型コロナウイルスの影響で、広報戦略でもある講演活動ができなくなった。子供たちに文化体験と笑顔を、と実施してきた「おてらおやつ劇場」(人形芝居や紙芝居)はオンラインで公開中。新作「ぶんぷくちゃがま」のための「ぶんぷく勧進」に協力を呼び掛けている。「活動を始めた当初は思っていなかったんですが、私自身も仏様のおさがりで育てていただいたことに気づいて。44年かかりました。だからこそ、子供たちにお返しするのが自分の役目だと思う。ユニークな生き方をしたいとお坊さんになりましたが、そんなことはもうどうでもいい。遠回りをしてきましたが、その回り道も修行だったのだと思います」

【おてらおやつクラブの主な支援募集】

☆給食がなくなる夏休み支援のため「おそなえ」を届けてください

☆豪雨災害支援(物資)にご協力を

☆「ぶんぷく勧進」にご支援を

 (詳しくはホームページhttps://otera-oyatsu.club/)

      

【特定非営利活動法人おてらおやつクラブ】

 日本国内の子供の貧困問題の解決を目指し、寺の「おそなえ」を仏からの「おさがり」として経済的に困難を抱える家庭やその支援団体に「おすそわけ」(配布)する活動団体。平成25年に大阪市で起きた母子餓死事件をきっかけに代表理事の松島靖朗さんが発案、26年から活動を開始し、29年特定非営利活動法人に。30年度グッドデザイン賞大賞を受賞。

【プロフィル】まつしま・せいろう 昭和50年奈良県出身。奈良・安養寺第三十二代住職。特定非営利活動法人おてらおやつクラブ代表理事。早稲田大学商学部卒業後、NTTデータ、アイスタイルでインターネット関連事業、会社経営に従事。平成22年浄土宗総本山知恩院にて修行を終え僧侶となる。平成26年に「おてらおやつクラブ」活動を開始。

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