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「2800億円を提供」 大手チェーン会長が魅了されたM資金詐欺、その衰えぬ魔力

 先の大戦に敗れた日本を統治したGHQ(連合国軍総司令部)が接収したとされる巨額資産「M資金」を提供すると持ち掛け、多額の現金をだまし取った男らが、神奈川県警に逮捕された。大手飲食チェーンの運営会社会長が狙われ、30億円以上を詐取されたとみられる。他にも複数人が被害にあい、県警がこの分についても立件を検討していることも判明。M資金の絡む詐欺事件は古くから繰り返され、実業家や著名人らがターゲットにされてきた。なぜ、だまされるのか。男らの巧妙な手口を追った。(浅上あゆみ)

“自社ビル”用意

 「このビル。まるまる1棟、うちの法人のものなんですよ」。平成29年9月、皇居の緑も見渡せる東京・丸の内の高層ビルで、高級スーツに身を包んだ男2人が男性に語りかけていた。

 「英国にあるM資金の管理団体と直接交渉できる」「交渉費を払ってもらえたらあなたにも提供できる」

 詳細な資料を示し、男性を勧誘した2人の男。今年6月、県警に逮捕されたM資金詐欺グループのメンバーで、指示役とされる武藤薫容疑者(66)と共謀し、30億円をだまし取った疑いがもたれている。

 男性に提供可能額として示されたのは、実に2800億円。「M資金の提供を受ける人なら、その1%はポンと出せるような人でないとだめだ」。こう持ち掛け、一度に28億円を振り込ませたこともあったという。さらに、資金を保管する倉庫代など、男性は要求されるまま入金を繰り返した。

 だが、捜査関係者によると、男性が招かれた都心の高層ビルは自社物件ではなく、男2人のうちの一人が代表を務める法人が、会議室一室を事務所登記しているだけ。法人もペーパーカンパニーだったといい、信用を得るための「舞台装置」だったようだ。

冷静な判断奪う

 関係者によると、被害に遭った男性は、複数の大手飲食チェーンを束ねる会社の会長。ほぼ一代で東証1部上場を実現した経営手腕の持ち主で、だまし取られた金銭は全て、個人資金だったという。

 捜査関係者によると、男性はそもそも、25~26年ごろにも武藤容疑者が絡むM資金提供名目の手口で数億円をだまし取られていた疑いがある。このときには武藤容疑者と音信不通になったが、男性は県警に対し「審査に落ちたのだと勝手に思い込んでいた」と説明しており、だまされたという感覚はなかったとみられる。

 逮捕された男2人は今回、この件を知らず男性に接触。情報を聞きつけた武藤容疑者が、指南役を買って出たとみられている。グループ側は「(M資金提供の)話は生きている」と持ち掛けて20回以上、男性と接触。“再チャンス”の到来に、男性は冷静な判断力を失っていたようだ。

 産経新聞の取材に対し、男性の会社の広報担当者は「社としてお答えできることはない」と回答。同社関係者も「会長に(詐欺被害について)何か聞いたことはないし、言われたこともない」とする。

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