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【お金は知っている】しのび寄る「超円高」の悪夢 日米間の金利差逆転なら一挙に加速、安全通貨とされる円だが…

 外国為替市場ではそろりと円高が忍び寄っている。日米間の金利差が急速に縮小しているためだ。逆転するようだと、円高が一挙に加速しかねない。

 グラフは2008年9月の金融危機「リーマン・ショック」直前から最近までの日米の10年もの国債金利差と円の対ドル相場の推移である。リーマン後から12年秋までは金利差が縮小するに従って、円高に拍車がかかった。

 当時、白川方明(まさあき)総裁の日銀は、米連邦準備制度理事会(FRB)が国債買い入れなど大規模な量的緩和政策に踏み切ったのとは対照的に静観を決め込み、円高デフレ不況が深刻化した。この結果、日本経済は主要国の中で最も強くリーマン危機による打撃を受けた。

 12年12月に発足した第2次安倍晋三政権は異次元金融緩和を第1の矢とするアベノミクスを打ち出し、日銀は長期国債を大量に買い上げて金利を下げ、米国債との金利差を拡大させた。1ドル=80円を切っていた超円高はたちまち終息し、円安へと急転回した。それが一段落した後も、FRBの利上げもあって金利差はしばらくの間、高水準で推移し、円相場も1ドル=110円前後で安定してきた。

 しかし、FRBは19年に入ると利下げに転じ、日本との金利差は急速な勢いで低下し続けている。この6月の長期金利差は0・7%で、リーマン後の最低水準を下回った。

 それでも、円相場の上昇速度は極めて緩く、今月27日時点で1ドル=105円台である。リーマン後の超円高の再来懸念は心配し過ぎになるかもしれない。しかし、円を押し上げる潜在的な要因は強くなる一方だ。

 まずは、日銀とFRBの政策スタンスの違いだ。日銀は16年2月にマイナス金利政策に踏み切った。やり方は年間で80兆円に上る長期国債の大量購入による。しかし、マイナス金利のために収益を圧迫される銀行界が悲鳴を上げた。日銀は長期国債購入額を減らして、国債金利をゼロ%台に戻したが、金融機関の国債需要の高まりを背景に金利は昨年再びマイナスに落ち込んだ。

 コロナ恐慌対策を打ち出した4月の金融政策決定会合では、金融機関の収益を支えようとして、長期金利をマイナスの領域から脱出させてゼロ%台とする方針を決めた。6月の長期国債保有額は前年比で13兆円増にとどまる。

 対照的に米FRBは長期国債の大量購入によって長期金利を押し下げている。パウエル議長はマイナス金利には消極的だが、日米金利差は狭まる一方だ。

 さらにコロナ禍の世界では各国中央銀行の大掛かりな金融緩和を受けて余剰マネーがあふれ返っている。リーマン後の数年間がそうだったように安全通貨とされる円はいつ投機攻勢にさらされるかわからない。

 全体的なドル安傾向は今後も続く。円、ユーロなど主要国通貨を総合したドルの加重平均値は米金利低下を受け、3月下旬以来の4カ月間で8%近く下落している。ドル安基調の中で、円はどうしても買われやすいのだ。(産経新聞特別記者・田村秀男)

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