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【私と胸高鳴る人たち(7)】青木崇高が語る いつか信長役で「敦盛」舞う野望

画・青木崇高
画・青木崇高

 私はかつてニューヨークに半年間留学していたことがある。

 NHK大河ドラマ「龍馬伝」の撮影後、現地の語学学校に入学した。2011年のことである。1クラスは10人。スペイン、イタリア、ブラジル、ロシア、韓国、そして日本と国籍も年齢も性別もバラバラだ。毎日英語を英語で習い(当たり前だがこれがキツい)、知恵熱を出しながらも三十路のニューヨーカーとしての生活を謳歌していた。

 ある日のクラスで「舞妓」とはどういう女性ですか、と聞かれた。すると日本人の女生徒が下品な英語を使って「舞妓」について的外れな説明をした。私は驚いた。

 彼女は冗談のつもりで言ったのかもしれないが、他のクラスメートは「日本人の言う正しい情報」として記憶するはずだ。私は京都の花街を少しは知っていたのでそれは違うと言った。しかし細かく説明できるほど詳しいわけではない。さらに英語であったので、どこまで拭えたかも分からない。

 クラスに変な空気が流れるなか、私は日本人でありながら、「日本の文化」について詳しく説明できないことに気付いた。遠いニューヨークで学んだことは「日本のことも、もっとよく識(し)れ」だった。

 そしてこれが「日本舞踊」を習うきっかけとなった。時代劇での所作や仕草など、身のこなしの全てが「日本舞踊」には含まれている。日本の役者としてはぜひ習得したい。ああ、20代の仕事がなく暇だったあの時間を「日舞」の習得に充てていれば…いや悔やんだって仕方がない。その頃はその頃で習うお金がなかったのだ、ウン。

 帰国後、友人から尾上流の三代目尾上菊之丞先生を紹介していただき、通うことになった。が、やはりおいそれとはいかない。簡単に見える手の動きからつまずいた。両手で滑らかに∞を描くのだがこれが難しい。私、パンチングマシーンのやり過ぎで手首を骨折した過去がありまして…いやこれは言い訳だ。先生の手の動きは吸い込まれるように滑らかで、エロいとさえ思ったのが初日の感想だった。

 「あはは、まずは10年習うことだね」。友人は言った。

 10年、まずは10年か。確かに菊之丞先生のあの佇まいなど一朝一夕で纏えるはずがない。石の上にも3年か…いやいや10年!桃栗3年柿8年か…いや10年!

 月日は流れた。半年、1年は通っていたが、撮影などで仕事が忙しくなってしまい足が遠のいてしまっている。菊之丞先生、本当に申し訳ございません!

 こんな私ですが図々しくもいつか織田信長役で「敦盛」を舞いたいと思っております。またお稽古をつけてください、どうぞよろしくお願いいたします。

(俳優)

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