PR

ニュース プレミアム

湊かなえさんが新刊「カケラ」で問う美容と幸せの基準

新刊「カケラ」を刊行した作家の湊かなえさん=神戸市中央区(南雲都撮影)
新刊「カケラ」を刊行した作家の湊かなえさん=神戸市中央区(南雲都撮影)
その他の写真を見る(1/2枚)

 人はなぜ、見た目にとらわれるのか-。作家、湊かなえさん(47)が、美容をテーマにした小説「カケラ」(集英社)を刊行した。少女の自殺の謎に迫りながら、容姿をめぐる固定観念をあぶりだす心理ミステリー。美醜、体重の軽重など、外見が人生に与える影響とは。幸せの基準とは何かを問いかける。(横山由紀子)

 美容整形外科を取材した湊さん。「芸能人や人生で特別な節目を迎えている人が行く場所」と思っていたが、顔の角質を取るピーリングなどを体験し、「日々のお手入れ、または美容院の延長のような感じで、みなさん明るく来られている。心療内科のカウンセリングのようでもありました」と話す。そして「患者の内面と向き合いながら、外見を治療する人の視点で見てみたら面白いんじゃないかな」と執筆にとりかかった。

 《17歳の少女が、大量のドーナツに囲まれて自殺したらしい。美容クリニックの医師である久乃は、自殺した少女、有羽が、同級生の八重子の娘だと知り、その真相を関係者に聞き取っていく。有羽はモデルみたいな美少女だとも、学校一のデブだったとも噂され…》

 八重子と有羽の同級生らが交互に登場し、さまざまな話を語り出すが、事件の核心にはなかなか近づかない。結婚後に20キロ以上も体重が増えてしまったという女性、鼻を美しくしたいと訴える少女、身長が低いのを気にして毎日牛乳を飲んだという男性…。また、ミス・ワールドビューティー日本代表に選ばれたこともある久乃に対して、その美貌に意地悪な言葉を投げかける人もいる。

 「社会的にも成功し、何もかも持っている幸せの象徴のような人を前にしたら、同列に立ってみたり、マウントを取ってみたり、本音が出るだろうなと思ったのです」

 久乃は、美容整形外科医という仕事に誇りを持って生きている。理想の容姿を手に入れることは、「心の豊かさにつながる行為」だと。

       ■    ■

 作中、ドーナツが象徴的に登場する。外見はうかがえても、人間の中身までは分からない。そんな真理が、真ん中が空洞の形状と通じるものがある。

 ドーナツというアイテムを思いついた途端、「空洞がいろいろなものに結びつけて考えられて、創作がスムーズに進みました」と話す。

 母が揚げるドーナツが大好きで、性格の明るい人気者だったという有羽。親子仲もよく、太ってはいたが、劣等感を持つことはなかった。

 《どうしてみんな、太っていることが悪いって決めつけるの?》

 そんな有羽は、知人女性に、太った容姿を同情されたことで深く傷ついてしまう。

 「痩せたら幸せなのかな、その基準てなんだろう。太っていても健康ならいいんじゃないとか。少女が死ななくてよかった方法ってなんだろうと考えてもらえたら」と湊さん。悪気の無い攻撃、余計なおせっかい、妙な遠慮、価値観の押し付けなどで、人を追いつめることもある。 

       ■    ■

 《時には、甘いものに頼らなければ乗り越えられない人生もある》

 甘味を愛する湊さんの思いが、作中の言葉に反映されている。

 「執筆の休憩ごとにお菓子も食べるし、コーヒーもお砂糖を入れて飲んだりしてます。ノースイーツの徹夜とかありえない。ご褒美のないハードな仕事とかも」と笑う。

 昔は、「〝トリガラ〟みたい」と言われたほど細かったが、作家になって12年の間に10キロ以上太ったという。

 「私自身、あまり見た目にこだわったことがなくて、それは作家という職業が、見た目とは関係のないところで評価していただけているので、満足しているのかもしれません」

 みなと・かなえ 昭和48年、広島県生まれ。平成19年、「聖職者」で小説推理新人賞受賞。「告白」で21年に本屋大賞。28年、「ユートピア」で山本周五郎賞。30年に「贖罪」がエドガー賞の候補となる。ほか、「少女」「夜行観覧車」「望郷」「山女日記」「リバース」など著書多数。

あなたへのおすすめ

PR

PR

PR

PR

ランキング

ブランドコンテンツ