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【田村秀男のお金は知っている】中国の通貨金融制度は実質的に「米ドル本位制」

 米紙ウォールストリート・ジャーナル13日付(電子版)が、「中国が世界経済回復を牽引(けんいん)できない理由」と題する解説記事を載せていた。2008年9月のリーマン・ショック時には、原材料などへの中国の需要急増が世界全体の成長を押し上げたのとは対照的に、中国は現在、景気刺激のための支出を抑制している。このため、リーマン危機のような役割を中国が果たすのは不可能とする中国市場依存度の高いドイツ工業団体代表の発言を引用している。中国市場にますますのめりこんでいる日本の経団連の楽観論とは大違いだ。

 同記事は習近平政権がなぜしょぼい景気対策しか打てないのか、について触れていない。評論家の石平さんから「田村理論」だと評されている拙理論なら答えは簡単だ。

 中国の通貨金融制度は実質的に「米ドル本位制」であり、ドルの流入具合が悪ければ財政・金融面での拡大策がとれないという欠陥がある。西側世界では米金融専門家を含め中国経済を市場経済と同列で論じるのが一般的だが、戦前からの中国共産党政策の歴史を綿密にたどってゆけば、いまなお財政・金融政策の基本は極めて特異なドル本位であることがわかる。

 論より証拠、データがすべてを物語る。グラフは中国人民銀行の資金発行(マネタリーベース)および総資産に占める外貨資産(外貨準備)シェアと商業銀行融資の推移である。リーマン危機が起きたとき、外貨資産は資金発行残高の1・3倍に達していた。人民銀行はたっぷりあるドル資産を担保に人民元を大量発行し、商業銀行は産業界や地方政府、消費者への融資を一挙に拡大した。中央政府は金融面でのゆとりを背景に大型の財政出動に踏み切ることができた。

 この結果、中国経済はリーマン後、2桁台の高度経済成長を達成し、10年には国内総生産(GDP)規模で日本を抜き去って世界第2位の経済超大国と化した。ドル獲得の主力源である中国の対米黒字に寛容だったオバマ前大統領までの米政権のおかげである。

 ところが、虎の子の外貨準備は増えなくなり、15年には総資産比で100%を割り込み、17年末には7割を切り、現在に至る。外準頭打ちの主因は資本逃避である。15年夏は人民元レートの切り下げ、その後は不動産市況の悪化、そして18年夏には米中貿易戦争が勃発した。

 習政権は資本逃避を食い止めようとして党幹部による不正蓄財を取り締まった。党幹部やその身内が不正行為によって稼いだ富はドルに換えられ、海外に持ち出される。逃避の中継基地が国際金融センターの香港である。習政権が昨夏に逃亡犯条例を香港に押し付けようとしたが、香港市民の反対を受けて失敗した。

 今度は香港国家安全維持法(国安法)を強制適用した。習政権としては香港を徹底的に監視、取り締まることによって、資本逃避ルートを封じ込める狙いがあるはずだ。香港の市場機能がまひすれば元も子もないのだが、せっぱ詰まった習政権はそれどころではない。(産経新聞特別記者・田村秀男)

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