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【私と胸高鳴る人たち(6)】青木崇高が語る 北村有起哉は「ずっと観続けたい先輩」

画・青木崇高
画・青木崇高

 もし私が「最も感動した、役者が演じる伝統芸能」を聞かれたら迷うことなく、「2016年NHK木曜時代劇『ちかえもん』、北村有起哉の義太夫節」を挙げるだろう。

 この劇中で北村有起哉さんは近松門左衛門の代表作である人形浄瑠璃「曽根崎心中」「出世景清」の「義太夫節」を披露しているのだが、私の知る限りでこれ以上のものを見たことがない。

 ただ勿体ないことにこの「義太夫節」、あまりに凄すぎて「本職の吹き替え」、つまり「口パク」だと一部で思われてしまっていた。そのくらいの凄さなのである。

 有起哉さんに電話をかけてみた。

 「竹澤團七師匠から教えていただいて、まあとにかく練習したよ」

 やはりそうだった。聞けば家の中でも移動の間も音声データをひたすら流し練習し続けたという。苦労の末に習得はしたものの、「義太夫節」は家族の耳にまでしっかりとこびり付いてしまったらしい。

 有起哉さんはその「義太夫節」をさらに竹本義太夫の役(関西弁も全く違和感がない)に馴染ませ、物語の世界を創っていくという工程を驚くほど高いレベルでやってのけていた。

 「義太夫節」披露後には周りにいた全員の「ここまで仕上げてくるか」という心の声が聞こえた。私は自身の「万吉」という役を忘れそうなほど感動していた。

 電話口の有起哉さんは続ける。「でもやっぱり演じてて気持ち良くなっては駄目かな」

 ハイ。マッタクオッシャル通リデス。自分に酔っている芝居ほど見苦しいものはありません。私だったらきっとドヤ顔していました。キモニメイジマス。

 他作品においても有起哉さんは脚本の真意を瞬時に読み取り、時に繊細で、時に大胆な芝居を現場にどんどん提案していく。

 それによりシーンの色味がグッと増す瞬間を幾度と見てきた。素顔はよく笑う茶目っけたっぷりの色男、私にとって「これからもずっと芝居を観続けたい先輩」である。

 昨今の状況が落ち着いたら、ぜひ一杯ごちそうしてもらおう。これだけ讃えさせていただいたのだから。(俳優)

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