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「絆」強調の平成、「ひとり」見直されたコロナ禍 山折哲雄さん新刊「米寿を過ぎて長い旅」

日本人の死生観、宗教観を見つめ続ける山折哲雄さん=昨年5月撮影
日本人の死生観、宗教観を見つめ続ける山折哲雄さん=昨年5月撮影
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 日本人の死生観や精神構造を鋭い視点で考察する宗教学者、山折哲雄さん(89)が、エッセー集「米寿を過ぎて長い旅」(海風社)を刊行した。生きること、老いること、死ぬことを、自身の経験に重ね軽妙な筆致でつづっている。この春、大病を患ったが復活。「命をいただきました」としみじみと語る。

(横山由紀子)

 山折さんは緊急事態宣言中の4月半ば、風邪をこじらせて肺炎が重症化し入院。新型コロナウイルスの感染ではなかったが、「人生3度目、生きるか死ぬかの苦しみでした」。治療の甲斐あって5月初めに退院、今では散歩に出るほどに回復し、大好きな酒も口にしたという。

 「人工呼吸器などの延命治療はしないでほしい」と医師に伝えていた。これまで、「自分の最期は断食往生死」と願い、日本では認められていない安楽死の「90歳以上の解禁」を提言してきた。「緩和医療の技術が相当進歩しているが、安楽死では許されない。改めて考え直してほしいと言わずにはいられない」と力を込める。

 退院の翌月に刊行された本書は、雑誌などに書いてきたエッセーに加筆、修正したもので、旅や酒、文学論、老い、病、葬送などさまざまな話題に及ぶ。

 冒頭では、自身の半生を年代ごとに振り返り、詩と散文で表現している。

 20代「下宿住まいの貧乏学生」。30代「結婚して 息子ができ 東京にいった」。40代「非常勤講師のはしご はしご はしご」。50代「東京を去って 京都にやってきた」。60代「京都にい続けて長逗留(とうりゅう)」。70~80代「死が 抜き足差し足で近づいている」…。

 ■   ■

 強調するのは、「ひとり」であることだ。

 《お前はひとりだ、ひとりだ、たったひとりだ、天の声がいつもきこえていた》

 「ものを考える、書く、表現する。その基本は、ひとりでいることなんじゃないか」と山折さん。今回のコロナ禍で、ひとりの時間が見直されるようになったが、「平成という時代を振り返ると、『寄り添う』『絆』など、人と人の密な関係が強調され、ひとりでいることの価値がおろそかにされてきたように思う」と分析する。

 また、オンライン飲み会が注目される昨今だが、「酒の究極の味は、ひとり酒」だという。

 ■    ■

 葬送の問題にも踏み込んでいる。

 《死んだあと葬式はしない、墓は造らない、遺骨は自然に返す-そう思っている》

 1990年、米国のライシャワー元駐日大使の遺灰が太平洋にまかれたというニュースが、話題となった。「日本でも、人の死を送る儀礼を考え直そうという従来の仏教式の葬儀が揺らぎ始めた時代でした」。30年ほど前から、自然葬の普及・啓発を行うNPO法人「葬送の自由をすすめる会」の初期メンバーとなり、活動してきた。

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