PR

ニュース プレミアム

【田村秀男のお金は知っている】中国共産党指令で「香港株急騰」の危うさ カネにもの言わせる権力はカネがなくなれば…

 中国の習近平政権が、香港市民や国際世論の抗議を無視して香港国家安全維持法(国安法)施行を強行した。政治活動、言論を含む表現の自由を香港から奪い、中国本土並みの監視、検閲下に置く。情報の自由に支えられてきた国際金融市場香港の「死」を意味する、というのが西側世界の一般的な受け止め方だ。

 ならば、香港株式市場はてっきり動揺するだろうと思いきや、国安法施行後、株高が続いている。西側メディアは「香港市場に上場する中国企業は増え、中国本土からの資金流入は拡大し、世界第2位の経済大国である中国本土と香港の金融的なつながりも一層強化されると、市場関係者は期待している」(2日付ロイター)というふうに、市場に漂う楽観論を報じた。

 グラフは6月下旬以降、今月6日までの香港株価指数(ハンセン指数)と上海および深セン株式市場からの香港株取引高の日毎の推移である。香港と上海、深セン市場は「ストックコネクト」と呼ばれる証券取引所間の相互取引制度があり、上海と深セン市場経由で中国本土の投資家が香港株を人民元建てで取引できる。

 グラフを見れば一目瞭然、7月2日以降、本土両市場からの香港株買いが急増、それにつられるようにハンセン指数が高騰している。チャイナマネーが香港の市場不安を吹き飛ばした格好だ。それは安定した市場の基調になるのだろうか。

 1997年7月の英国の香港返還時、現地駐在していた筆者が思い起こすのは95年10月4日の出来事だ。中国共産党統一戦線工作部は深セン市内の党幹部専用ホテルに中国国有企業30社の香港代表を招集した。新華社、中国銀行、華潤公司などで、党中央は香港での不動産、株買いを命じたのだった。

 当時、迫る返還を前に香港株式や不動産市場は不透明感が漂って揺れていた。党中央として香港回収の成功を内外に誇示するためには、香港市場の活況が欠かせない。中国銀行など中国国有商業銀行は国有企業にふんだんに資金供給し、香港株、不動産買いに出動した。香港財閥も呼応した。不動産価格は高騰し始め、株価も連動し、史上最高値で返還を迎えた。

 今回も党中央によって「統一戦線工作」の布石が事前に打たれたのかもしれない。人民元なら中国人民銀行がいくらでも発行できる。資金供給を受ける大手の国有商業銀行、国有企業も、党幹部と直結する既得権者もこぞって香港株買いに出動できる。香港株取引高の1、2割のカネが注入されるから、香港株急騰は確実だ。これほどうまく儲けられるおいしい話は他にないだろう。

 だが、安心するのはまだ早い。カネに頼る者はカネに弱い。カネにもの言わせる権力はカネがなくなれば滅ぶ。中国本土にとって香港は主力外貨調達源である。ワシントンが香港での米ドルと香港ドル、人民元の交換を禁じれば香港市場はまひし、中国本土経済が行き詰まる。ホワイトハウスも米議会も対中金融制裁を段階的に強めようとしている。 (産経新聞特別記者・田村秀男)

関連トピックス

あなたへのおすすめ

PR

PR

PR

PR

ランキング

ブランドコンテンツ