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【私と胸高鳴る人たち(4)】青木崇高が語る 800年続く「一子相伝」の礼法と弓馬術

画・青木崇高
画・青木崇高

 2014年、ある映画の出演が決まった。「蜩ノ記」。原作は葉室麟氏の直木賞受賞の時代劇小説である。

 メガホンを取るのは(この表現はもうしないか)黒澤明監督の現場を助監督として数多く務めた小泉堯史監督である。

 私は主人公のために馬で奔走したり、彼の祝言のために謡(うたい)を披露するという良き友人の役なのだという。乗馬の経験こそあるが、全力で走らせる早駆けの経験はない。そのため、撮影までの期間、「早駆け」と「謡」を習うこととなった。

 映画の製作スタッフに紹介していただいたのは「小笠原流弓馬術礼法」。鎌倉時代から800年続くこの弓馬術礼法は「流鏑馬(やぶさめ)」で大変有名だ。実はこの「小笠原流」、以前に雑誌の体験企画でお世話になったことがある。

 三十一世宗家の小笠原清忠さんの見守る中、礼法では、立つ、座る、歩く、お辞儀をする、などの基本動作を、弓馬術では木馬にまたがり、姿勢や弓の構え方などを、同い年である若先生、小笠原清基さんに丁寧に教えていただいた。

 無駄のない、理にかなった美しい動きを求められるその稽古は、武士とはほど遠い私の筋肉に悲鳴をあげさせた。最終日には鹿児島の仙巌園で行われた流鏑馬の奉納にも特別に立ち会わせていただくという、大変貴重な経験をさせていただいた大満足の企画であった。

 驚くことに小笠原流は流儀を教えることで生計を立ててはならないという家訓があるという。教えることで生計をたてると妥協が起き、流儀が卑しくなるため、別に生業を持たなければならないのである。

 そこまでやるのか、いやそこまで徹底しているからこそ、「一子相伝」として現在まで継承されているのだなと思った。

 あれから2年、私は製作スタッフの案内のもと再び教わることになった。記憶をたどりながら礼法のお辞儀をし、懐かしさを感じながら木馬にまたがった。あぶみに足を乗せ、弓の持ち方、引き方を習い直し、的に狙いを絞り込むが、慣れない動きに筋肉が震えだす。やはり「弓馬術」、簡単である訳がない。数日間、筋肉痛に悶えながら習い続けた。

 ふと違和感を覚えた。確か、映画のシーンに必要なのは「早駆け」ではなかったか。友人のために「早駆け」ることが私の役目ではなかったか。稽古が「歩く馬の背中で両足立ちをする」というアクロバティックなものに移ったとき、それは確信に変わり、私は製作スタッフに申し出た。すると「確かにそうですね」との回答。

 丁寧に教えてくださった先生方に感謝を込めてお辞儀をし、私は翌日から乗馬クラブに通うこととなった。

 映画に「流鏑馬」のシーンはなかったが、いつか時間をかけてしっかりと習いたい。そしてこの「流鏑馬」、ぜひ一度、生で観ていただきたい。間違いなくその迫力に圧倒されるはずだ。(俳優)

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