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【ザ・インタビュー】イライラしたら豆を買おう 落語家・林家木久扇さん 新刊で「生きるヒント」披露 

今春予定の「親子3代落語会ツアー」が、コロナの感染拡大で秋に延期に。「孫(林家コタ)の一生の思い出になるだろうから、ぜひ実現させたいですね」と話す林家木久扇さん(トヨタアート提供)
今春予定の「親子3代落語会ツアー」が、コロナの感染拡大で秋に延期に。「孫(林家コタ)の一生の思い出になるだろうから、ぜひ実現させたいですね」と話す林家木久扇さん(トヨタアート提供)
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 不思議なタイトルだ。豆というのは煎(い)り豆のこと。なぜイライラしたら買うべきかは本書を読んでもらうとして、88ある言葉の中からなぜこれを?

 「本書は僕なりの人生のトリセツをまとめたもの。ただ、『トリセツ』や『生きるコツ』などのタイトルの本は本屋さんにいっぱいあって、他の本に紛れてしまう。背表紙を見たときに、『豆を買うって何だろう』と思わせたかった」

 事業家としての顔も持つ木久扇さんらしい。本書は、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため高座をつとめる寄席が休演、自粛生活でできた「コロナ時間」を利用して執筆した。

 「毎日のように寄席でしゃべっていましたので、しゃべれないのがこんなに大変とは思わなかった。また、放送用に無観客で落語をしましたが、お客さまの笑い声や拍手が聞こえない。落語は一人しゃべりの芸とはいえ、会場にいるお客さまといっしょに作り上げるもの。反応がないのは本当につらかった。当たり前と思っていた日常は黄金の日々だったんですね」

◇   ◇

 もともと落語家ではなく漫画家を目指していた。都立工芸高校のデザイン科を志望したが、先生の勧めで都立工業高校の食品科へ進学。卒業後に入社した森永乳業を4カ月で辞め、漫画家の清水崑に弟子入りした。プロとなって2年、22歳のときに清水から「お前さんはやることが面白い。これからはテレビの時代になるから、絵が描けてしゃべれたら売れるぞ、ちょっと落語をやってみたら」と言われ、「落語家を主人公にした漫画を描けるかも」と軽いノリで3代目桂三木助に入門した。

 半年後に三木助が亡くなり、他の3人の弟子が柳家小さん門下に入る中、ただ1人8代目林家正蔵(彦六)門下へ。怪談噺や芝居噺を得意とする正蔵とは芸風が全く違うが、選んだことを「人生で一番大きな分かれ道。よい選択をしたと今でも心から思っている」と振り返る。

 落語だけでなく、テレビリポーターをしたり、「全国ラーメン党」を結成してラーメン店を経営したり。スペインでの出店は7千万円の損となる大失敗だったが、その経験も「ラーメンは人類を救う」という新作落語にして稼いだ。

 「どんな経験も無駄なことは何一つありません。高校で食品の勉強をしたことはラーメン作りに役立ったし、漫画家に弟子入りしたことは前座時代にカット描きのバイトにつながった。一見ばらばらに見えるすべてが僕の中ではつながっている。こうした生き方ができたのは、人とのつながりを大事にしてきたから。人とのご縁こそが大事だなと、82年を思い返してつくづく身に染みています」

◇  ◇

 原点となる体験は小学1年のときの東京大空襲だ。燃え盛る焼夷(しょうい)弾に囲まれ、家が焼け、多くの人の死を目の当たりにしたことで、「戦後の人生はすべていただきもの」との思いが強い。がんや腸閉塞(へいそく)で何度か死にそうになったときも、「空襲で死んでたっておかしくないのに、ここまで生きてこられて得した」と取り乱すことはなかった。

 本書は、特に若い人に読んでほしいという。

 「今の若者は自分に自信がないというか、自己肯定感が低い人が多いように思います。それは、生きていられる貴重さを実感していないからじゃないかな。僕は空襲や病気で何度も死にそうになったので、生の重さをいつも実感している。そんな僕の生きてきた足跡を知ってもらい、生きるヒントにしてもらえれば」

 人生100年時代。木久扇さんには残りの人生で決めていることがある。それは、自分の背丈だけ本を出して死ぬということ。すでに70冊ほど著書があるが、背丈にはまだまだ届かない。目標を立てたら必ず実現してきた木久扇さんだけに、これから出る本も楽しみだ。    (文化部 平沢裕子)

     

 【3つのQ】

Q最近印象に残った映画は?

A萬屋錦之介主演の「柳生一族の陰謀」。映画見放題のサービスを契約していて、映画は毎晩見ている。アニメの「無限の住人」や「鬼滅の刃」も面白かった

Q最近悔しかったことは?

A近所に住む長男と孫たちが毎朝うちに来る。僕の健康を心配してきてくれていると思っていたら、長男はスポーツ新聞を読むため、孫はヤクルトを飲むためだった

Q健康の秘訣は?

Aラジオ体操を毎朝やるのと、加圧ベルトをしてポーズをとっている。それと歯を大事にしている。テレビでアップになったとき歯が汚いと感じが悪いので。歯間ブラシは全種類持っていて、面白がって手入れしています

 はやしや・きくおう 昭和12年、東京・日本橋生まれ。36年、8代目林家正蔵門下に入り林家木久蔵となる。44年、日本テレビ「笑点」の大喜利メンバーに。48年、35歳で真打昇進。平成19年、長男が2代目木久蔵を襲名、木久扇を名乗る。「バカの天才まくら集」など著書多数。キクキンの名でユーチューバーとしても活動中。

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