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激減する葉タバコ農家、嫌煙より怖いのは天気

 もうもうとたばこの煙が立ち込める中で捜査会議が進行し、犯人像が次第に明らかになっていく-。黒澤明監督の映画「天国と地獄」の一場面だ。こんな光景ははるか昔。たばこ離れが進む。担い手の高齢化もあり、全国の葉タバコ農家数は激減している。新型コロナウイルスの感染拡大では「重症化リスクを高める」との指摘もなされた。風当たりは強まるばかり。当の農家は、時流をどう感じているのだろうか。(織田淳嗣、写真も)

農家1万人が6人に

 6月上旬、岡山県久米南(くめなん)町の山間地帯に広がる葉タバコ畑を訪ねた。6反(約6千平方メートル)の土地では、1万1千本以上の苗が人の背丈ほどに成長していた。観葉植物のような大きな葉をつけ、よく晴れた空に向かってピンク色の花を咲かせていた。

1万本以上が育つたばこ畑。一部は花を咲かせていた=6月8日、岡山県久米南町
1万本以上が育つたばこ畑。一部は花を咲かせていた=6月8日、岡山県久米南町
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 葉タバコ農家の杉本健さん(40)は、その花を金具で次々と摘み取っていく。葉に栄養を行き渡らせるための「摘芯」作業。「咲かない方がいい花なんて珍しいでしょう。花びらが落ちて腐ると、病気のもとにもなるんです」。花を摘むものの、花が咲かないうちに芽を摘むと茎が柔らかくなり過ぎてしまい、農薬を行き渡らせる作業を阻むという。タバコの育成はデリケートな勝負だ。

 今後収穫が始まり、葉を専用の乾燥機で乾燥させる。11月の出荷を終えれば、畑では二期作の白菜やキャベツの栽培を始める。

 杉本さんが就農したのは20歳の頃。「この20年間、ずっと僕が岡山で葉タバコ農家の『ルーキー』なんです。最後の1人になるかもしれない」

 中国地方の農家などで作る「西日本たばこ耕作組合」(鳥取県米子市)によると、岡山県内の葉タバコ農家は記録のある最も古い昭和35年で1万7705人。平成7年に千人を切り、令和元年に6人まで減少した。杉本さんが最年少だ。栽培面積もピーク時の昭和41年の4949ヘクタールから、令和2年度は4・3ヘクタールと千分の1以下になっている。

廃作、法改正

 縮小は農家の自発的なものだけでなく、政治が密接に関わっている。

 昭和60年、たばこの専売制が廃止されて民営化でJTが誕生した際、JTには「たばこ事業法」で、農家の葉タバコを全量買い取ることが義務付けられた。政府はそのJTの株式を保有している。

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