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【痛みを知る】ヘルニア由来のぎっくり腰に最適な治療法 森本昌宏

 40歳を過ぎた方でみられる腰痛の原因として最も多いのが「腰椎椎間板ヘルニア」である。わが国では、100万人以上の患者さんがおられると推計されている。

 さて、このヘルニアを起こす椎間板とは、背骨(首~腰まで)を形作っている骨(椎骨と呼ぶ、その前方に位置する椎体)の間にあって、クッションのような役目を担っているのだ。椎間板は、水分含量の高い髄核(いわゆる“芯”である)とそれを取り囲む線維輪(せんいりん)(強靱(きょうじん)な線維が輪状に折り重なっている)から成り立っているが、年齢を経るに連れて水分量が減少し、線維輪に亀裂を生じるようになるのだ。そして、線維輪の裂け目から髄核が膨隆したり、飛び出したりしてしまう状態がヘルニアなのである。

 ヘルニアを起こした椎間板は、近くを走る神経の根っこ(主として知覚を伝える神経線維が束となっている部位)を圧迫して、腰痛だけではなくて坐骨神経痛(sciatica)や脚の痺(しび)れなどを引き起こす。余談ではあるが、この“sciatica”とは、シェークスピアが戯曲『アテネのタイモン』で用いた造語であり、殿部を指すギリシャ語“ischiadikos”に由来している。

 いわゆる“ギックリ腰”の原因のひとつであり、初期には洗顔時や前屈みでの仕事中に痛みを感じたり、冷えることで痛みが強くなったりする。その後、ある日突然にやってくる“魔女の一撃”の発作があった後に、次第に慢性の痛みに移行する。咳(せき)やくしゃみによって腰から脚へと痛みが広がるようであれば要注意である。

 背骨のうちで腰にある骨(腰椎)は5つの椎骨の繋(つな)がりによって形作られているが、ヘルニアのおよそ95%は第4と第5番目の骨、ないしは第5番目と仙椎(骨盤の中央)の間で起こる。これらにより第5腰神経の根っこが圧迫を受けた場合、痛みに加えてふくらはぎの外側~足の甲~親趾と人指し趾、中趾にかけての痺れを生じて、踵(かかと)だけで歩くことが難しくなる。第1仙骨神経(骨盤の後ろから出る)の圧迫では、踵~足の外側~薬趾と小趾にかけての痺れと共に、つま先歩きができなくなる。

 治療の原則は安静であり、前屈みの姿勢、重いものを持ち上げる動作を避けることが重要である。なお、痛みがおさまらずにいわゆるへっぴり腰で受診された患者さんに対して、私の施設では腰部硬膜外ブロック(圧迫を受けている周囲の炎症などを改善する)、椎間板内加圧注入(椎間板造影を行った後に局所麻酔薬と副腎皮質ステロイド薬を注入する)、神経根ブロックや腰部交感神経節ブロックなどを段階的に行っている。

【略歴】森本昌宏(もりもと・まさひろ) 大阪なんばクリニック本部長。平成元年、大阪医科大学大学院修了。同大講師などを経て、22年から近畿大学医学部麻酔科教授。31年4月から現職。医学博士。日本ペインクリニック学会名誉会員。

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