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「コロナ感染後の日本」 本屋大賞受賞の凪良さんら作家100人、リレーで作品発表

2020年本屋大賞を受賞した凪良ゆうさん(納冨康撮影)
2020年本屋大賞を受賞した凪良ゆうさん(納冨康撮影)

 新型コロナウイルスの感染拡大する「2020年4月1日以降の日本」を舞台に、赤川次郎さんや浅田次郎さんら作家が1日ずつ作品をリレーで書き継いでいく講談社の連載企画「Day to Day」。5月からインターネットサイトで無料公開され、話題を呼んでいる。新型コロナ時代の日本を映す貴重な作品になりそうだ。

作家100人が参加

 連載は、4月1日以降の日本をテーマに、1人の作家が小説またはエッセーを執筆するスタイル。各作品は1000文字程度のため、2~3分で読み終えることができる。

 講談社などが運営する文芸サイト「TREE」で連載。5月1日には、辻村深月さんによる4月1日を舞台にした作品「今日からはじまる物語」が掲載された。以降、1カ月前を舞台にした作品が毎日掲載されている。

 講談社によると、連載のきっかけとなったのは政府の緊急事態宣言だ。4月15日に企画を立て、「数年たっても、この時のことを忘れずに前に進んでいくため」という趣旨で、作家に執筆を依頼。28日時点で赤川次郎さんや重松清さん、凪良ゆうさんら50人以上の賛同を得た。その後も多くの作家の参加が決まり、最終的に100人まで拡大する予定だ。英語と中国語にも翻訳されている。

 同社文芸第三出版部の担当者は「今を忘れるための楽しい物語ではなく、100年後に読んだときに価値のあるものをと考えました。簡素な言葉のニュースがあふれるなか、作家の豊かな言葉で綴ってもらいたかった」と説明する。

 辻村さんの作品は、外出自粛のために友達に会えなくなった男の子が主人公。「エイプリルフールの嘘」を自粛するよう呼びかけがされたことに思いをはせる場面からスタートする。まさにこの日ならではの物語だ。

 仕事を失った夫と妊娠中の妻の話もあれば、在宅勤務を通して同僚との関係をつづった作品なども。その一方で、4月15日に掲載された有栖川有栖さんの作品では、人気シリーズのキャラクターが登場し、ファンを沸かせた。

 カミュの「ペスト」やボッカッチョの「デカメロン」…。今はまさに、感染症の古典や名作に光が当てられている。担当者は「連載期間の100日が経って振り返ったとき、今の時期を写し取った、記録文学になっているのではないでしょうか」と期待を込める。出版も検討しているという。

若年層が支持、SNSで拡散

 書店の多くが休業を余儀なくされるなか、インターネットでの無料公開というスタイルは、予想外の反響もあった。

 紙の本の読者層と同じ40~50代を想定していたが、実際は10~30代と若い世代の読者がほとんどだった。担当者は「連載開始を告知した、TREEの公式アカウントは、1万5000回リツイートされました。SNSで情報を入手しやすい世代に広がっていったようです」と話す。

 2~3分で読める手軽さゆえに、子供が寝ているときや家事の合間など隙間時間に読む人が多いようだ。

 ネット上では、「文章を読む楽しさを、どんな時もどんな場所でも味わえる幸せをかみしめたい」「日々を彩る言葉の力と想像力に勇気をもらえる」と好評だ。

 立命館大大学院先端総合学術研究科の美馬達哉教授(医療社会学)は「今マスメディアで描かれている新型コロナは、外出自粛のためにも恐怖を一面的に強調する形になっており、個人が経験している新型コロナのある生活とはギャップもある」と指摘する。今回の連載で作家が描くのはさまざまな立場、状況の人たちの1日だ。「手洗いをしましょうといった啓蒙(けいもう)や科学的な説明ではなく、個人の具体的な経験を取り上げることができるのは文学ならでは。隔離された状況での孤独は普遍的なテーマでもあり、これからも多くの作品が生まれるのではないか」と話している。  (文化部 油原聡子)

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