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【熊木徹夫の人生相談】休校中の娘の涙 メンタルが心配 

相談

 18歳の娘のことで相談です。4月から大学に入学し、友達を作り勉強にいそしむはずでした。しかし入学式は中止となり、授業はオンラインになりました。全くではないものの、娘はパソコン上での授業についていくのが困難なようです。ストレスになっていると大学に伝え、カウンセリングの対応をしてもらえましたが、根本的な解決には至らず、娘は毎朝、起きては泣いて、うつむいたまま、声も出さず。胸を押さえ、表情が暗く、笑顔は見えません。明るい話題を振っても反応もなく、何が不安かと聞くと「勉強」とだけ、小さな声で答えます。私にできることは何か分かりません。アドバイスをお願いします。(神奈川県の母親、50代)

回答

 平時において、社会や組織の秩序を守り、コツコツ努力を重ねていく人がいます。そのような人は日々の苦難が多少あっても、忍耐強く乗り越えていける。しかし必ず、物事は表裏一体です。大きな社会体制の変化に弱いという弱点がある。あなたの娘さんはそのような人ではないでしょうか。

 日本は終戦から今日まで、学校の入学式や授業自体が無くなることなど、被災地をのぞいてほとんどなかった。しかし、今回の新型コロナウイルスのパンデミック状況という未曽有のカタストロフ(自然界および人間社会の大変動)では、そのような例外的事態が起きています。このような時、最もデリケートな人に時代のしわ寄せが来てしまう。それが例えば、彼女なのでしょう。何が不安かと訊(き)かれ「勉強」と答えるものの、きっと不安の大本はそれだけではない。日々彼女にのしかかる重圧は、簡単に形容できるものではなく、かろうじてか細き声でそう答えるしかないのでしょう。

 毎朝起床するたびに沈鬱な面持ちでふさぎ込み、さめざめと泣き、全身に悲哀を湛(たた)えている。これは明らかにうつ状態であり、できるだけ早い精神科の受診が望まれます。人は絶望的な状況に遭遇し右にも左にも行けなくなると、いとも簡単にうつ状態に陥ってしまう。その絶望につける薬はないが、傷心の彼女にいくばくかの安楽を与える薬と人はあるはずです。

 今彼女に「勉強」は必要ない。ただそれを理解させ、自(おの)ずからその軛(くびき)を外させるように働きかけることはなかなか容易ではない。しかし、明けない夜はない。あなたと彼女、そして新しい主治医とで、明日につながる小さき希望を探り当てることは必ずできるはず。それを信じましょう。

回答者

熊木徹夫 精神科医。昭和44年生まれ。「あいち熊木クリニック」院長。著書に「自己愛危機サバイバル」「ギャンブル依存症サバイバル」(ともに中外医学社)、「精神科医になる~患者を〈わかる〉ということ~」(中公新書)など。

相談をお寄せください

 住所、氏名、年齢、職業、電話番号を明記のうえ、相談内容を詳しく書いて、〒100-8078 産経新聞「人生相談 あすへのヒント」係まで。

 〈メール〉life@sankei.co.jp

 〈FAX〉03・3270・2424

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