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【一聞百見】7代目所長に就任 成果に固執せず「熟成」を促したい 国際日本文化研究センター所長・風俗史研究者の井上章一さん

「パソコンが使えず、テレワークのご時世に全く不向きな人間です」と話す井上章一さん=京都市西京区(永田直也撮影)
「パソコンが使えず、テレワークのご時世に全く不向きな人間です」と話す井上章一さん=京都市西京区(永田直也撮影)
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 風俗や文化を独特の切り口で考察し、「霊柩車(れいきゅうしゃ)の誕生」「美人論」「京都ぎらい」などの話題作で知られる風俗史研究者の井上章一さん(65)。〝色物〟と捉えられがちなテーマに膨大な資料探索で挑み、風俗史の新たな局面を切り開いてきた。今春、創立以来33年間勤める国際日本文化研究センター(日文研、京都市西京区)の7代目所長に就任。「好事家」を自任する井上さんの探究心に迫る。

(聞き手 横山由紀子 文化部記者)

■風俗を研究するわけ

 日文研は昭和62年、日本文化を国際的に研究する機関として誕生し、梅原猛さん、河合隼雄さん、山折哲雄さんらが所長を務めてきた。井上さんは4月に、前所長の小松和彦さんからバトンを受けた。「人文学の研究は、香り高いワインの熟成のようにじっくり時間をかけることが大切」とし、「所員を成果、成果であまり煩わせないようにしたい」と語る。

 そして、「私のようなパソコンを持たない人間を所長にしたらいかんと思うんですけど」と笑う。アナログな研究者として、古い新聞や雑誌、小説など、膨大な文献を渉猟し、人が取り上げないテーマに情熱を傾ける。

 初めての著書は、霊柩車の歴史を追った「霊柩車の誕生」(昭和59年)だ。ある日、スイス人留学生と京都市内の道路を歩いていたところ宮型霊柩車が通った。「すごい車だ。誰が乗る車なのか? 自分も乗ってみたい」。留学生からフランス語で畳みかけられ、「外国人には、こういうものが面白いのか」と研究を思い立ったという。

庶民文化研究家の町田忍さん(右)と共著「The 霊柩車」(平成4年)を出した頃の井上章一さん(井上さん提供)
庶民文化研究家の町田忍さん(右)と共著「The 霊柩車」(平成4年)を出した頃の井上章一さん(井上さん提供)
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 61年には、「つくられた桂離宮神話」でサントリー学芸賞を受賞した。簡素な日本美の象徴とされた桂離宮の神格化された通説を解体し、時代の流れが人間の感受性をいかに左右するかを実証した日本文化論。「桂離宮の良さがよくわからない」という率直な思いを口にできなかった苦い過去に端を発するという。

 さらに、美人が時代によってどう語られてきたかを調べた「美人論(平成3年)」や、下着をめぐる羞恥心の変化を考察した「パンツが見える。」(平成14年)など、学界で「興味本位」と軽視されるテーマにも真正面から取り組んできた。

 同書は、新聞や雑誌、広告、映画などの文献を収集して分析した力作で、「十数年の資料探索を経ています」と語る。20世紀の半ば頃まで女性はスカートが風でめくられてもさほど気にせず、喜ぶ男性もあまりいなかったという。少し前まで女性は和服でパンツをはかず、裾が乱れて心配するのはパンツではなかったから。「パンツを見られて恥ずかしいという感情は、歴史の中で作られてきたのです」と説く。

(次ページは)梅原所長のたった一つの注意…

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