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【田村秀男のお金は知っている】チャートの勾配はリーマン・ショック後とぴったり一致…「ソロスチャート」で再び“超円高”の悪夢

 新型コロナ恐慌の中、日米欧の中央銀行が金融の量的緩和、平たく言えば、おカネを刷り増していることを、先週の本欄で明らかにした。今回は日銀がカネ刷り競争に負けると日本経済がヤバくなることを論じよう。

 米連邦準備制度理事会(FRB)のドル資金発行に日銀の円資金発行が追いつけず、大きく水をあけられると、大幅な円高になってしまい、仮にコロナ禍が過ぎても日本経済は劇症デフレの淵に沈みかねない。実際に、それが起きたのは2008年9月のリーマン・ショックだった。

 グラフはリーマン後のFRBのドル資金発行1ドル当たりの日銀資金発行額の推移である。市場アナリストの間では「ソロスチャート」と呼ばれる。ソロスとは、通貨投機で巨万の富を築いたジョージ・ソロス氏を指すが、米エール大学名誉教授の浜田宏一内閣官房参与がソロス氏側近に由来を聞くと「無関係」との答えだったという。

 学術的にこのチャートが対ドル・レートを左右するということは証明できないから、合理的な思考を好むソロス氏は、そんなチャートで為替投機を行っていると思われるのは心外なのだろう。

 しかし、データを追ってみると、ソロスチャートは不気味なほど現実の円・ドル交換レートと関連性が高い。リーマン前の08年5月、チャートのレートと円ドル相場は1ドル=105円で一致していた。リーマン危機後、FRBは猛スピードでドルを刷りまくったが、当時の白川方明(まさあき)日銀総裁は円を刷らない。その結果、ソロスチャートのレートは急激に下がり続ける。外国為替市場はこれに引きずられるように急激な円高局面に突入した。

 それでも白川日銀は「金融政策ではデフレを解決できない」という独自の理論に固執する。11年3月には東日本大震災が起きたが、日銀はあろうことか金融を引き締め気味にした。チャート・レートは同年6月に42円台を記録し、円相場は70円台にまで急騰した。未曽有の金融危機と天災は、日銀の不作為によってデフレ不況の加速という経済大災厄に転じた。

 12年12月に政権を奪い返した安倍晋三首相の勝因は、日銀の量的緩和を主柱とするアベノミクスの提唱が幅広い有権者の支持を集めたからだった。日銀総裁は黒田東彦(はるひこ)氏に代わり、異次元金融緩和に踏み切った。するとソロスチャートは見事に反転し、円安局面に切り替わった後、1ドル=110円前後の水準で相場は安定するようになった。

 そして今年に入ると新型コロナウイルスのパンデミックだ。FRBは3月中旬からリーマン時をしのぐ勢いでドルの増発を続けている。対照的に日銀による円の増量幅は少なめだ。ソロスチャート・レートは2月に147円だったのが4月には107円を付けた。同月の円相場は106円台と円高に振れる。チャートの勾配はリーマン後とぴったり一致する。何とも不気味である。(産経新聞特別記者・田村秀男)

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