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「燃えると冷える」を克服 秘話が詰まった水素トーチ 出番待つ(上)

 新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、国内で東京五輪の聖火リレーが延期されてから1カ月半が過ぎた。この延期に複雑な思いを抱いているのが、五輪史上初となる水素燃料を使ったトーチを開発したチームだ。燃焼時に二酸化炭素(CO2)を出さず、次世代エネルギーの主力とされる水素燃料を身近な存在に感じてもらおうと、チームは「冷える」といった特有の障害を1年半の開発期間をかけて乗り越えてきた。大会組織委員会では、リレーの一部区間で使う水素トーチを数十本用意したが、今はスタートラインに立つ日を静かに待っている。

■水素の灯で「印象変えたい」

 日本は、水素を燃料とした燃料電池車(FCV)や水素燃料電池などの分野で世界をリードする。大会組織委員会には、今回の五輪を「次世代の日本を引っ張る技術力の見本市にしたい」(幹部)という狙いもあることから、水素を燃料としたシャトルバスを導入するなど、随所にアピールする舞台を作ってきた。

 ただ、国内では依然として水素に「危ない」「爆発しそう」といったイメージが残るのも事実だ。「市街を走る聖火として、水素が安全に燃える姿をみてもらえれば、水素燃料への日本人の印象が変わるかもしれない」。こう考えたのが、水素トーチを作るきっかけだった。

 水素燃料は過去の聖火リレーで使った前例がなく、トーチもLPガス(液化石油ガス)を燃料とする一般的なものとくらべ、技術は格段に難易度が増す。

 当初は実用化に懐疑的な見方があったこともあり、組織委が具体的に検討を始めたのは、リレーのスタート予定日から2年を切った平成30年の夏ごろだった。

 自動車やガス、鉄鋼メーカーなど、水素燃料に知見のある国内の複数企業がチームを結成し、同年末から具体的な開発が始まった。しかし、実際にトーチづくりを始めると、幾重もの困難が襲いかかった。

■冷えて放出が止まる

 一番チームが苦しんだのは「温度」だ。水素は特殊な「水素吸蔵合金」に吸着させてため込み、必要に応じて放出させる仕組みだが、この合金は水素を放出する際に冷える性質がある。冷却が進むと、トーチに内蔵した合金からの水素の放出が止まってしまうのだ。放っておくと、容器はマイナス10度程度まで冷えたという。

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