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【田村秀男のお金は知っている】“コロナ恐慌下”に日銀はカネを刷り負けるのか? 円高進行、デフレ不況に拍車…リーマン後の二の舞いも

 今年の5月連休は在宅しかなく、仕事と休みのオンオフの切り替えに苦労させられた。鈍った感覚のせいか、題材の経済は深海底に沈んだ難破船のように見えてしまうが、それはモノや人に限っての話である。電子空間の中で膨大なカネがうごめく。

 新型コロナウイルス恐慌下の世界では、中央銀行によってカネが無限につくられる。

 2008年9月のリーマン・ショックの後、米連邦準備制度理事会(FRB)はドルを刷って、まず紙くずになりかけた住宅ローン債券を、次に米国債を中心に買い続けた。少し間を置いて共通通貨ユーロを発行する欧州中央銀行(ECB)も追随した。

 わが国の日銀はというと、何もしなかった。日本の金融機関は米欧と違って、リーマン危機で目立った損失を受けなかったため信用不安は起きないし、しかも金融緩和は実行済みと、タカをくくっていたからだ。

 拙論は当時、産経新聞朝刊1面で「日銀よ、どこに行った?」と書き、日銀だけがカネを刷らないと、とんでもない災厄が日本経済に降り注ぐと警告したが、それでも白川方明(まさあき)総裁(当時)は動かなかった。結果は超円高であり、輸出産業が大打撃を受け、デフレ不況に見舞われた。日本はリーマン・ショックの本家、米国やリーマン危機ととともに不動産バブルが崩壊した欧州よりもはるかに激しく景気が落ち込んだ。

 グラフはリーマン・ショック後の日米欧の中央銀行資産規模の推移である。中央銀行資産は、カネを刷って国債などの金融資産を買い上げた結果を表す。中央銀行によるカネの発行量とは表裏の関係にある。FRBの資産はリーマン後2倍、3倍と増え、14年には5倍近くまで膨らんだ後、量的拡大策を打ち止めた。19年末には景気減速を受けて再び緩和策に転じたが、今年3月上旬、コロナ・ショックで株式市場が暴落するのを見て、パウエル議長は「無制限の国債買い入れ」を宣言した。4月22日時点でFRBは3月初めに比べ2兆3000億ドル以上も資産を増やした。ECBも今回はただちに追随を決めた。

 対照的に日銀はもたついた。3月16日に黒田東彦(はるひこ)総裁が打ち出した資産買い増しの柱は指数連動型上場投資信託(ETF)の買い入れ枠を6兆円から12兆円にすることだった。リーマン後無策だった白川日銀よりはましだが、これでは米欧の中央銀行に対して日銀が刷り負ける。円高が進行し、コロナが終息してもデフレ不況に拍車がかかる。リーマン後の二の舞いだ。

 日銀は4月27日になって「上限なしの国債購入」を宣言した。目的は国債金利をゼロ%で維持するためであり、従来の緩和路線の域を出ていないと、米欧のアナリストはみる。さて、連休は明けた。カネに休みボケはない。円相場はどうなるか。(産経新聞特別記者・田村秀男)

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