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【一聞百見】コロナに負けへん 京町家は暮らしの文化を伝える「器」 公益財団法人奈良屋杉本家保存会常務理事・料理研究家 杉本節子さん

「京都の暮らしの文化を残したい」と話す杉本節子さん=京都市下京区の杉本家住宅(永田直也撮影)
「京都の暮らしの文化を残したい」と話す杉本節子さん=京都市下京区の杉本家住宅(永田直也撮影)
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 観光客の姿が消えた京都で一瞬、江戸時代の洛中に迷い込んだような気分になる。市中最大規模の京町家、杉本家住宅(京都市下京区)。幕末の元治の大火後に再建され、この4月23日に築150年を迎えた。同家に生まれ育ち、町家に伝わる暮らしの文化を伝えているのが杉本節子さんだ。周年記念事業で、初の大屋根ふき替え工事に臨もうという矢先、世の中が新型コロナウイルスに見舞われた。行事中止の一方で、寄付を募る活動は始めなければならない。今後の思案と文化財の継承に寄せる思いを聞いた。なお、感染拡大に配慮して取材は電話とメールとし、短時間の写真撮影をお願いした。

(聞き手 山上直子 編集委員)

■再建150周年の春に

 「ほんに、困ったことですが仕方がありません」と話す杉本節子さん。

 杉本家は江戸時代の寛保3(1743)年、初代が呉服商を創業して以来の旧家だ。その本宅である杉本家住宅は、禁門の変による火災で焼失、第6代当主が明治3(1870)年に再建した。現存する京町家として平成22年に国の重要文化財指定を受け、今年でちょうど10年になる。

 ウナギの寝床といわれ住宅の間口が狭い京都で、約30メートルの間口を持つ大店の構えはさすがに京都を代表する町家である。表通りに面する店舗部分と奥の居室部分に分かれた構造は「表屋造り」と呼ばれ、典型的な商家の風情を今に伝えている。呉服商として成功した一方で質素倹約を家訓とし、良質ながら華美過ぎない品格が同住宅の特徴だ。

 「年々老朽化が進み、一昨年の台風21号でさらに傷みが大きくなりました」と顔を曇らせる杉本さん。

再建150周年を迎えた杉本家住宅。復刻した提灯が往時のにぎわいを物語る
再建150周年を迎えた杉本家住宅。復刻した提灯が往時のにぎわいを物語る
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 再建以来初という大屋根の修復が決まり、今年度は耐震診断を、来年度からは2カ年計画でふき替えを予定している。塀の解体修理も含め総事業費は2億円に上る。「さあ記念事業や」「ご寄付もお願いせんならん」と、準備をしていたところだった。

 『雛(ひな)飾り展』や『端午の節句展』、23日に予定していた150周年記念行事も中止に。「楽しみにしてくださっていた皆さまには、本当に申し訳ないことになりました」と話す。

 先ごろ発表された祇園祭の催事中止の影響も。同家は「伯牙山(はくがやま)」の懸装(けそう)品の飾り場になっており、宵山に開く「祇園祭屏風(びょうぶ)飾り展」も中止になりそう。ため息も出ようというものだ。

 「それでも」と杉本さんは前を向く。

 「生活文化、暮らしの文化といういわば無形の文化は、有形の器(家など)があってこそ継承されていくもの。そのためにも工事をやり遂げたいのです」

 そんな思いを込め、昨年度に京都市の補助金を申請して制作したのが、表玄関に下げた提灯(ちょうちん)だ。

(次ページは)まっとうに生きる指針忘れず…

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