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【知っておきたい伝統芸能】延期された團十郎襲名公演の重み コロナ収束後の華やかな舞台を願う

襲名披露会見で記念写真におさまる十三代目市川團十郎白猿に襲名する市川海老蔵、八代目市川新之助に襲名する堀越勸玄(左)=東京都千代田区(撮影・蔵賢斗)
襲名披露会見で記念写真におさまる十三代目市川團十郎白猿に襲名する市川海老蔵、八代目市川新之助に襲名する堀越勸玄(左)=東京都千代田区(撮影・蔵賢斗)

 今年5月から3カ月かけて東京・歌舞伎座で行われる予定だった市川海老蔵改め、十三代目市川團十郎白猿の襲名披露公演が、新型コロナウイルスの感染拡大による政府の緊急事態宣言を受け、延期となった。市川宗家の襲名は、今年の歌舞伎界最大の行事というだけでなく、来年に延期が発表された東京五輪・パラリンピックとともに、日本の文化・スポーツ界の一大イベントとなるはずであった。

 そもそも市川團十郎の名跡は、歌舞伎界では特別なものとされてきた。江戸時代に活躍した初代團十郎は、江戸歌舞伎の「荒事(あらごと)」という勇壮で豪快な芸風を創始した立役者であり、七代目の團十郎は「勧進帳(かんじんちょう)」をはじめとする歌舞伎十八番を制定、明治時代の九代目團十郎は歌舞伎の近代化をはかるなど多大な功績で「劇聖」とまでたたえられた。現在まで十二代を数える團十郎家は、その時代ごとに多くの名優を輩出、歌舞伎界をリードしてきた。

 だからこそ海老蔵の父、十二代目團十郎が平成25年に亡くなって以来、7年ぶりの大名跡復活となる今回の襲名は特別な意味があり、長男の堀越勸玄(かんげん)の八代目市川新之助と親子同時襲名という華やかさも相まって、歌舞伎界を超え、社会的な注目を集めていたのだ。

 実際、歌舞伎の本拠地である歌舞伎座での3カ月連続の襲名公演は、近年では昭和60年の十二代目團十郎、平成17年の十八代目中村勘三郎ら数えるほど。先に発表されていた襲名公演の出演者には、尾上菊五郎、松本白鸚(はくおう)、片岡仁左衛門、中村吉右衛門、坂東玉三郎ら歌舞伎界の大看板がずらりと顔をそろえていたことからも、歌舞伎界における團十郎襲名の重要性と期待のほどがわかる。

 だが、4月7日の緊急事態宣言を受けての延期。海老蔵は松竹による発表前の3月26日のブログに「正直なやむ」と題して、「個人的には披露出来るならば予定通りに行いたい気持ちもある。けれど、多くのお客様の健康面や現段階での新型コロナウイルスによる状況を思うとはたして?それでよいのか、、と延期を考えないといけないとも思う」(原文のまま)と、心情を吐露していた。

 そして、発表後の4月7日のブログに「なによりもお客様と役者や裏方スタッフ、歌舞伎に関わるすべての方、そして、その先にいらっしゃるすべての方々の健康と安全を考え、止むなく延期とさせていただきます」と報告。

 「この先、感染がさらに拡大し日本の医療が崩壊するようなことが起こっては絶対にいけない。そのために私たちひとりひとりが自制し、忍耐強く、新型コロナウイルスに立ち向かうしかないと思っています。私は、また舞台に立つその日まで日々精進を続けてまいります」と記した。

 確かに、海老蔵にとっても松竹や関係者にとっても大変な決断だったであろう。これほどの大襲名となると相当な準備が必要であり、当代きっての人気俳優の襲名公演はプラチナチケットになるはずであった。歌舞伎界全体を盛り上げるだけでなく、新・團十郎の誕生で歌舞伎界が新たなステージに向かうことも期待されていたからである。

 新たな襲名の日取りは未定だ。なんとかコロナ禍が早く収束して、襲名披露公演が、歌舞伎ファンの思いを乗せ、当初予定していた通り華やかに行われることを願わずにはおれない。(亀岡典子)

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