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【自宅でプレビュー】今こそ確認したい、身近な幸せ 「画家が見たこども展」@三菱一号館美術館 

フィンセント・ファン・ゴッホ《マルセル・ルーランの肖像》1888年 油彩/カンヴァス ファン・ゴッホ美術館蔵 Van Gogh Museum, Amsterdam (Vincent van Gogh Foundation)
フィンセント・ファン・ゴッホ《マルセル・ルーランの肖像》1888年 油彩/カンヴァス ファン・ゴッホ美術館蔵 Van Gogh Museum, Amsterdam (Vincent van Gogh Foundation)
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 新型コロナウイルス感染拡大により、美術館・博物館の休館が続いている。開幕後まもなく休止された展覧会があれば、開幕できずに“凍結”状態にある展覧会も。いずれも各館が何年もかけて準備した渾身(こんしん)の企画。再び美術展を楽しむ日が一刻も早く来ることを願い、自宅で“下見”はいかがだろう。非常事態宣言が出る前に取材した展覧会をいくつか紹介したい。(文化部 黒沢綾子)

ナビ派に注目

 リモートワークで自宅にいると、隣接する公園から子供たちの甲高い声が聞こえてくる。新型コロナウイルスはいまだ猛威をふるっているが、マスクをして元気に遊ぶ親子の様子を見ると、少しホッとする。

 125年前のパリ・リュクサンブール公園にも、無邪気に遊ぶ少年らの姿があった。スイス出身のナビ派の画家、フェリックス・ヴァロットン(1865~1925)の「公園、夕暮れ」(1895年)。男の子2人は当時流行していたセーラー服を着ている。かたわらの女性たちは母親か乳母らしい。

 三菱一号館美術館(東京都・丸の内)の「画家が見たこども展」は、こうしたナビ派の作品を中心に、油彩や版画、素描、挿絵本、写真など約100点で構成されている。

 ナビ派とは19世紀末のパリで活動した画家グループで、ナビとはヘブライ語で「預言者」を意味する。秘密結社を気取ったような命名は、世紀末の空気のせいだろうか。作風としては平面性や装飾性を重視し、身近な日常を色彩豊かに描いている。彼らが好んだ主題の一つが子供の姿だった。

 高橋明也館長によると、西洋美術史において「子供の世界」が主題として取り上げられるのは、宗教画の幼子キリストや天使、ブリューゲルらフランドル系の風俗画を除けば、J・J・ルソーの思想などが世に広まった18~19世紀以降のこと。ロマン主義者は子供を大人とは違う純粋で崇高な存在だとしたが、ナビ派も子供を「最も身近かつ深遠な芸術のインスピレーション源」としたという。

 もっとも、子供は愛らしいばかりではない。ヴァロットンの木版画「可愛い天使たち」(1894年)を見ると、警察に連行される男を、大勢の子供が追いかけている。無邪気さに潜む子供の残酷さを表している。

小さな幸せ

 ナビ派の主要画家、ピエール・ボナール(1867~1947)とエドゥアール・ヴュイヤール(1868~1940)、ヴァロットンに実子はなかったが、彼らはめいやおい、街にいる子供たちをよく観察し、身近な情景として活写した。彼らは基本的に都市生活者だった。

 父親らしき人に手を引かれて歩く、後ろ姿の女の子。流行のファッションをまとう姿は小さなレディだ。ヴュイヤールの「赤いスカーフの子ども」(1891年頃)は写真のようなトリミングで描かれているが、実際、ナビ派のメンバーらは持ち運びできるコダックのカメラを使っていたらしい。

 2人のおいを描いたボナールの「歌う子どもたち(シャルルとジャン・テラス)」(1900年)は、楽譜を手に、何となくつまらなそうな2人の表情がいい。ボナールは彼らの子供らしさを肯定し、愛情を持って描いたのだろう。

 一方、モーリス・ドニ(1870~1943)は2度の結婚で9人の子に恵まれた大家族の父だった。3歳の長女を描いた「サクランボを持つノエルの肖像」(1899年)は文句なくかわいい作品。敬虔(けいけん)なカトリック教徒のドニは、妻が子を抱く姿をまるで聖母子のように描くなど、しばしば宗教的主題と自らの家族の情景を融合させた。

ゴッホの赤ちゃん?!

 最後に、ナビ派に影響を与えた画家、フィンセント・ファン・ゴッホ(1853~90)の「マルセル・ルーランの肖像」(1888年)を紹介したい。頬がぷっくりふくらんだ、存在感抜群の赤ちゃん。ゴッホの南仏アルル時代の親友で、肖像画でもおなじみの郵便配達人、ジョゼフ・ルーランの末娘という。

 生涯独身のゴッホに子はいなかったが、友人家族の幸せを祈り、新しい生命を力強く描いたのだろう。

 子供がいる日常、家族と過ごす日々の幸せ-。画家たちが描いた情景は、コロナ禍と先の見えない不安の中、身近な存在の有難さを今いちど気づかせてくれる。

 三菱一号館美術館は臨時休館中で、再開は未定。「画家が見たこども展」は6月7日まで。同館は開館10周年記念企画として、自宅でさまざまなコンテンツが楽しめる特設サイト(https://10th.mimt.jp)を開設している。

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