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【ザ・インタビュー】「私は筋トレの反面教師」 ブームに警鐘 谷本道哉・近畿大准教授

「みんなで筋肉体操」でおなじみの谷本道哉さん。「その時々に興味のあることに熱中し、行き当たりばったりで生きてきました」
「みんなで筋肉体操」でおなじみの谷本道哉さん。「その時々に興味のあることに熱中し、行き当たりばったりで生きてきました」

 NHKの人気番組「みんなで筋肉体操」の指導員としておなじみの谷本道哉・近畿大准教授は、その上半身の驚異的な逆三角形が印象的だ。3月中旬、取材場所の喫茶店に濃紺のジャケット姿で現れた際、鍛え抜かれた体形はシルエットからみてとれた。開口一番出てきたのはやはり、新型コロナウイルスの感染拡大に関する心配事だった。

 「感染を恐れて高齢者が外に出なくなっている。動かないと筋力が衰えていく。これはまずいと思い、室内でできる効果的な体操企画をNHKのスタッフにメールで打診し、数日後に実現にこぎつけました」

 「やるか、すぐやるか」をモットーとする谷本さんらしい有言実行だった。

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 若い肉体を保つための具体的な筋トレ方法ときめ細かな食事術をまとめた本書は、5年前に刊行された書籍の新装版だが、古びるどころか、今こそ読まれるべき内容が満載だ。

 まず読んで気づくのは、研究論文の引用の多さ。谷本さんは声を大にしてこう話す。

 「そもそも学術的に正しいことしか書いてはいけないはずなのに、いいかげんな本が出回っている。本書のタイトルにもわざわざ“学術的に正しい”とつける必要もないんですけどね」

 本書で気づかされるのは、運動不足の深刻さだ。世界の全死亡のうち9・4%(日本人は16%)が、運動不足が原因であるとする研究報告が紹介され、「運動不足病は世界的に大流行している“パンデミック”状態である」と引用する。新型コロナのパンデミックにより、運動不足の“パンデミック”が加速している実態には要注意だ。

 それでも、運動や体操に腰の重い人が少なくないのも事実。そんな人を駆り立てる言葉の数々も魅力的だ。「快適に動ける体は1分でつくれる」「しっかり歩けば、すべての道はプライベートジムになる」「『本気を出せば…』という言葉は二度と使わない」…。番組でも共演者に「きつくてもつらくない」「全部出し切れば気持ちいい」などと励ます谷本さん。「いずれも自分のトレーニング中に、自分に言い聞かせる言葉です。自転車に乗って横からメガホンで叫ぶのではなく、一緒に走らないと説得力はありません」

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 谷本さんの筋トレ道は筋金入りだ。兄の影響で小学生のころから鉄アレイでトレーニングを開始。社会人2、3年目でたまたま読んだボディービルディングの雑誌で、筋トレを生理学的に説明するボディービルダーで東大教授の石井直方氏(今春退官)の記事に衝撃を受け、会社を辞めて上京。東大大学院に入り、「サイエンスは人を幸せにする」を持論とする石井氏のもとで学び、筋トレの“伝道師”として今に至る。

 日々の食事はもとより、丘の上の大学キャンパスまで自転車通勤するなど、筋トレ中心の生活だが、苦い思い出もある。

 かつて「トレーニングに使うバーベルのプレートは一番大きな20キロのみ」というポリシーを持っていた。「小さい数字での細かい調整は男らしくない-という今考えるとおかしな考えですが、それでむちゃなことをした結果、肩は今でもめちゃめちゃ悪い。後悔しています」

 結局、正しい筋トレの敵は、虚栄心や自己満足といったものなのかもしれない。筋トレがブームとなる中、こうアドバイスする。「“がんばっている自分が好き”というのもいいが、けがをしないよう体をいたわった範囲での追求にとどめてほしい。その意味で、私は反面教師です」

 【3つのQ】

Q自身の筋トレのルーティンは?

A「1回20分×週4日」と決めています。いろんな組み合わせでやりますが、自分で実行しないことは人には勧めません

Q体を維持する上で食べ物にも気を使うとか?

Aスイーツも自家製です。チーズケーキは独自のレシピで2キロ分を作ります

Q好きな本は?

A河島英五さんのエッセイ「ほろ酔いで夢みれば」。ほっこりして、包み込むような優しさを感じます

     ◇

たにもと・みちや 昭和47年、静岡県生まれ。大阪大学工学部卒、東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了。博士(学術)。国立健康・栄養研究所特別研究員、順天堂大学博士研究員などを経て、近畿大学准教授。身体運動科学、筋生理学が専門。「みんなで筋肉体操」(NHK)などで実演し、運動の効果をわかりやすく解説している。

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