PR

ニュース プレミアム

「自然とともに暮らしを紡ぐ」草木染紬織着物作家の生き方

国産生糸で織り上げた美しい着物など
国産生糸で織り上げた美しい着物など
その他の写真を見る(1/4枚)

 糸の染めから織りまですべてをこなす草木染紬織着物の作家、野本久美さん(73)=松山市=は自然と向き合い、自然とともに暮らしを紡いできた。病気に倒れた母の看護を約30年間しながらの活動でもあったが、母がいたからこそ続いた仕事だと感謝する。新型コロナウイルスの感染拡大の影響が社会を覆っているが、「人間は自然がなければ生きていけない。こんなときだから、なんでも面白がって生きていたい」と話している。

国産生糸のこだわり

 自宅には織機が3台並んでいる。うち1台は若いころ、信州の古い民家を訪ね歩き、手に入れた思い出の織機だ。機織りは単調な作業の繰り返し。「昔話の鶴の恩返しみたいなことをやっていますよ」と笑って話す。繊細で自然な風合いの多色に織り上げるが、「平面で見るのと立体で見るのは違う。仕立ててみないと分からないです」。それも面白さの一つという。

 素材は国産生糸にこだわる。価格の安い海外製に押され、今ではほとんど流通しない国産とあって手に入れるのは大変だが、長野県や群馬県から集め、ぎりぎりの量を大切に使う。美しいものを作りたいという強い思いがあるからだ。

3台の織機と野本久美さん=松山市
3台の織機と野本久美さん=松山市
その他の写真を見る(2/4枚)

 一つの作品を仕上げるのにかかるのは2、3カ月。紫根(草花のムラサキの根)を使い、椿灰(ツバキの灰)を加えて木のうすでついて踏む。こうして染める液を作る。

 紫根、アカネ、藍、シラカシの葉、クリ、クヌギなどの染料で糸を染めてゆく。「蚕の糸はタンパク質を含んでいるので、草木で染めるとガッと色が入る。色が浅いと思ったら、10日ほど置いておきます。するとおなかがすいたのと同じで、また糸に一気に入る。昔の織物の色が今でも濃く残っているのは、職人が繰り返し染めたからなのでしょう」

 国産生糸にこだわる着物のほかにも、作品はシャツやストール、のれんなど多岐にわたる。どれも自然の色合いが美しい。

「命を美しい色に変え」

 絵を描くのが好きで、何か美しいものを作りたいと考えていた20代のころ、よく通っていた美術館で草木染紬に出合い、「草木でこんな色が出るんだ」と感銘を受けた。松本市で空き家を借り、そこに2年間住んで染色家、森島千冴子さんの工房で技術を学んだ。

 また、創作の日々は、ずっと母を介護する生活でもあった。野本さんは7歳のとき父をがんで失い、20歳のころ、母がスモン病で倒れた。20年前、83歳で亡くなるまで介護は続いた。

続きを読む

あなたへのおすすめ

PR

PR

PR

PR

ランキング

ブランドコンテンツ