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【一聞百見】棋士になったユーチューバー「アゲアゲさん」 将棋棋士 四段・折田翔吾さん

 年齢制限の26歳を迎えた最後の三段リーグ。開幕から4連敗、後に6連敗。5勝13敗で終えた。平成28年3月、退会。「人生終わった」と茫然(ぼうぜん)とした。しばらく、スマートフォンのゲームばかりしていた。長い年月、情熱を将棋に費やしたものの、退会せざるを得なかった元奨励会員の中には、将棋がいやになって距離を置くようになる人も多い。しかし折田さんは「将棋は人生の一部」と、将棋に関わる道を選んだ。就職は考えず、趣味のパソコンを生かす道を模索。ユーチューブで将棋の実況を配信することを思いつく。

 実家暮らしだが、活動資金に困ると将棋関連の書籍を売却してしのいだ。動画の収入が入り出したのは3カ月ほどたったころ。「気持ちが少しは楽になりました」。少しだけ、生活の基盤ができた。

■ファンの大きな支えでプロに

 折田さんがユーチューブを始めたもう一つの動機は「将棋の技術を遊ばせておきたくなかった」ということだ。指さなくなると棋力は落ちる。棋士養成機関の「奨励会」を退会すると、それまで行ってきた研究をやらなくなる。棋力維持のためにも、ユーチューブは有効だった。元奨励会員は、退会して1年間は主なアマチュア棋戦に出場できない決まりがある。その期間を終えると、大会に出場するようになった。平成29年12月には全国アマチュア王将位大会で、30年3月には朝日アマ将棋名人戦で、それぞれ準優勝するなど活躍した。

ユーチューブ動画で棋士になったと報告。「ほんまになれたんかなあ、信じることが難しい」
ユーチューブ動画で棋士になったと報告。「ほんまになれたんかなあ、信じることが難しい」
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 大会で活躍すれば、ファンからの反応もあり、「勝てば勝つほど知名度が上がり、モチベーションになった」という。アマ棋戦の中には、好成績を収めればプロが参加する公式戦に出場できる大会がある。折田さんはテレビ棋戦「銀河戦」への出場権を得た。すると、プロ相手に7連勝するなどし、注目を集めた。このとき、プロ編入試験の受験が頭をよぎったという。編入試験はプロ公式戦で10勝以上し、かつ6割5分以上の勝率を達成すれば受験することができる。昨年8月末、折田さんは銀河戦で勝ち星を増やし、ついに受験資格を満たした。

 ところが、受験するには受験料50万円(税別)が必要だ。資金が苦しかった折田さんはクラウドファンディングで集めることにした。結果560人から約520万円が集まった。不合格だった場合を考えればプレッシャーになる金額だ。「勝てば天国、負ければ地獄。負けるリスクも考えました。ですが、目の前の勝負の勝算を高めるために、経済的にも精神的にもファンの支えを得ることが大きいと思いました」と振り返る。ファンからは「あきらめずに取り組む姿に勇気をもらった」との激励がメールなどで寄せられた。資金の返礼は、直筆サイン入りの色紙や扇子などを準備している。受験が決まって以降、ユーチューブは休んで研究に集中した。AI(人工知能)搭載ソフトでの研究や、試験官となる若手棋士との対局の対策も練った。また本番で使用されるものに近い将棋盤や駒、座布団を購入し、慣れるようにした。

(次ページは)棋士になるには…

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