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【欧州を読む】「他人との距離」守れない指導者たち 相次ぎ感染で“底なし沼”の政府機能不全に

3月28日、英政府の新型コロナウイルスの会議中、モニター画面に表示されるジョンソン首相。ジョンソン氏は新型コロナの感染後、テレビ会議で政府を主導している(ロイター)
3月28日、英政府の新型コロナウイルスの会議中、モニター画面に表示されるジョンソン首相。ジョンソン氏は新型コロナの感染後、テレビ会議で政府を主導している(ロイター)

 新型コロナウイルスが猛威をふるう中、欧州では新型コロナ対策の指揮を執る政治家の感染が相次いでいる。政府の機能が正常に機能しなくなれば、医療崩壊や経済低迷が加速する恐れが高い。新型コロナで悪化した状況から抜け出せない「底なし沼」に陥る危機感が広がっている。(ロンドン 板東和正)

指導者に迫る脅威

 英国のジョンソン首相は27日、新型コロナの感染を発表し、自主隔離を開始した。本人はテレビ会議を通じたテレワークで政府の対応を主導し続ける方針を強調したものの、連日開かれている感染状況を国民に伝える記者会見を欠席するなど公務に影響が出始めている。ジョンソン氏は28日、国内の全市民にあてた手紙で「事態は良くなるより先に、まずは悪くなる」と新型コロナの感染状況についてそう見方を示した。

 手紙の内容を受けて、英政治の専門家は「ジョンソン氏は、国内の感染状況だけでなく、自身の健康も今後、悪化する不安を抱えているのではないか」と分析した。その上で、「ジョンソン氏が公務を続けられなくなるだけでなく、議員や政策の立案に携わる顧問の大半が感染する最悪のシナリオも予想される」とした。

 事実、ジョンソン氏のほか、ハンコック保健・社会福祉相や英政府の最高医療責任者を務めるホイッティ氏の感染も判明した。英インペリアル・カレッジ・ロンドンのファーガソン教授は自身のツイッターで官邸や議会周辺が「感染者であふれている」と危機感をあらわにする。

 新型コロナの感染の脅威は他の欧州諸国の政治家にも迫っており、フランスでは文化相や国民議会(下院)の議員が感染。イタリアでも、複数の州知事の感染が明らかになっている。

なぜ感染?

 政治家の感染が相次いでいるのは、一部の議員らが感染防止のために人との距離を置く「ソーシャルディスタンス(社会的距離)」を守れていない傾向があるとの見方がある。

 米紙ウォールストリート・ジャーナル(電子版)は「各国の行政機関や議会は古びた建物が多く、政策担当者は狭いスペースに押し込まれがちだ」と問題視する。同紙は、その一例として、首相官邸などの英政府の中枢機能について「古い建物がつらなるロンドン中心部に集中している」とした上で、2020年度の政府予算案が発表された11日に登院した議員らが議場の椅子にかたまって座っていたと指摘した。

 「(感染したのは)不注意で、怠慢だったからではないのか」

 ジョンソン氏やハンコック氏の感染が発覚した27日に開かれた英政府の記者会見では、感染を避けられなかったことに対して記者から厳しい意見が相次いだ。ジョンソン氏の代わりに会見に臨んだゴーブ内閣府担当相は「新型コロナが(立場や年代などを)えり好みしないことを示した」と答えるしかなかった。

経済・医療に打撃

 政府関係者の感染に厳しい目が注がれるのは、政府の機能不全が起これば、医療や経済を直撃する恐れがあるためだ。

 英政府などは政府内の感染者が増加した場合に備えて、各方面の政策について協議をテレビ会議で協議できるシステムを準備してきた。だが、感染した閣僚らの症状が重篤化すれば、「協議そのものが不可能になり、政策が遅れる可能性がある」(元議員)。

 政策がずれ込むことでまず打撃が懸念されるのが経済だ。

 各国の経済政策をめぐっては、ドイツ政府は29日までに新型コロナの経済対策に1225億ユーロ(約14兆6000億円)を追加支出する方針を固めたほか、英政府も感染拡大による景気悪化で失業率が高まることを防ぐため、月2500ポンド(約33万円)を上限に月給の80%を支援すると発表した。ただ、欧州連合(EU)の欧州委員会は2020年のユーロ圏19カ国の実質成長率がマイナスになるとの見通しを示す中、各国が今後も次々と経済政策を打ち出さなければ、景気悪化は止められない。

 また、英国などでは医療従事者の人手が不足しており、医療崩壊を防ぐためのさらなる対策を急ぐ必要もある。

 欧州経済を研究する英専門家は「政治家の感染により政府の機能が正常通り動かなくなった場合、経済や医療が回復不可能の『底なし沼』に陥ってしまう」と述べた。

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