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神出鬼没のバンクシー 故郷の英ブリストルを歩く 今も続く街との絆 一部に落書きも

《The Grim Reaper》2003年 水上ナイトクラブのボート側面に描かれたもので、切り出されて保存されている
《The Grim Reaper》2003年 水上ナイトクラブのボート側面に描かれたもので、切り出されて保存されている
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 正体不明にして神出鬼没、鋭い社会風刺で知られるストリート・アーティスト、バンクシー。昨年、東京の湾岸部で見つかった「バンクシー作らしきネズミの絵」が都庁で展示されるや、2週間で3万5千人もの観客が押し寄せたのは記憶に新しい。さらに今年は日本でバンクシー展が相次ぐなど、注目度は増すばかり。謎多き覆面芸術家のルーツに触れようと先月、初期から新作までが街角に残る彼の故郷、イギリス西部の港湾都市ブリストルを訪れた。(文化部 黒沢綾子)

息づく反骨精神

 ロンドンから鉄道で約1時間50分。バンクシーが育った港町、ブリストルには今も彼が手掛けた十余点の作品が残り、それらを巡るツアーなど観光資源になっている。今回は徒歩やバスなどを使い一日でほぼ見て回ったが、バンクシー作品が特別に際立つというより、他のグラフィティ同様、街に溶け込んでいる印象を受けた。

 歴史をさかのぼれば、大西洋三角貿易の拠点の一つ、つまりアフリカ奴隷貿易の玄関口として発展した記憶がこの街には残る。また、第二次大戦後にはカリブ系移民が多く流入し、反人種主義などに根差した反骨精神、異種混交の文化が育まれていったという。

 特に顕著なのが音楽シーンだ。ブリストルはレゲエなどカリブ文化の色濃い独特のサウンドが息づくことで知られる。バンクシーと近い存在といわれる音楽ユニット「マッシヴ・アタック」は、米国発祥のヒップ・ホップとブリストル・サウンドを中心にした独自の音楽性で世界的に人気だ。米国の黒人文化で生まれ、音楽ともつながりの深いグラフィティも1980年代にブリストルの若者の間で広まり、その影響を受けたバンクシーは90年代前半に描き始めたという。

正体は公然の秘密?

 ブリストル時代の代表作「マイルド・マイルド・ウエスト」(99年)は、「BANKSY!」の署名が誇らしげ。盾を持つ3人の警官に、かわいいテディベアが火炎瓶を投げつけるミスマッチが面白いが、背景には若者のパーティーの一斉摘発といった警察権力への抵抗があるとされる。バンクシーといえばステンシル(型版)を使い、スプレーで素早く描く手法が定番だが、初期には全体、あるいは部分的にフリーハンドで描いていたことがわかる。

 「覆面」も最初は非合法の落書きを描く路上芸術家ゆえで、深い意味はなかったのかもしれない。「でも今となっては謎にしておこう、いや謎にしておきたいと、地元の人もメディアに決定的なことは言わないようです」と、『バンクシー アート・テロリスト』(光文社新書)などの著作がある毛利嘉孝・東京芸大教授。ブリストル在住のジャーナリスト、マクギネス真美さんは「直接彼を知る人に会ったことはありませんが、やっぱり皆、誇りに思っていますね」と話す。バンクシーの存在が影響しているかは不明だが、「英国の中でも、若者やクリエーターが暮らしやすい街とされている」そうだ。

守られる作品群

 ストリート・アートは消されたり上書きされる宿命にあるが、地元だけに「残す」意志は比較的強い。観光客に人気の「ウェル・ハング・ラバー」(2006年)は、かつて市議会がオンラインで世論調査をしたところ、なんと97%の市民が保存を支持したという。

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