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【エンタメよもやま話】米で“雪見だいふく”風もちアイス 大ヒットの予感

日本の「Mochi Ice(餅アイス)」と言えば「雪見だいふく」
日本の「Mochi Ice(餅アイス)」と言えば「雪見だいふく」

 さて、今週ご紹介するエンターテインメントは、「食」の話題です。

 最近はあたたかい部屋でアイスを楽しむ人々も増え、夏場だけでなく通年商品として人気に。業界団体では2017年から毎年11月15日を「冬アイスの日」に決め、東京都内でアイスクリームのメーカーやコンビニ各社の未発売の新商品やイチ押しのアイスなどを無料配布しています。

 そんななか、米国では昨今、日本でもおなじみのあのアイスが大流行の兆しを見せています。外は柔らかくてモチモチ、中はアイスという「雪見だいふく」のような「Mochi Ice(餅アイス)」です。今週の本コラムでは、米でのこの「餅アイス」の人気ぶりについてご説明いたします。

◇   ◇

 いつものように本コラムのネタ探しのため、欧米メディアのサイトを巡回していて、昨年、このニュースを見つけた時には驚きました。

 12月9日付の米CNN(電子版)などが報じたのですが、この「餅アイス」、過去3年で、アジア系に受けるニッチ(隙間的)なスイーツから、お菓子の市場の主流を行く人気商品に進化を遂げ、ショッピングモールや大手のスーパーマーケットチェーン、ストリート・フェア(大通りでの露店祭)など、あらゆる所で販売されているというのです。

 日本で「雪見だいふく」が大手菓子メーカー、ロッテから発売されたのは1981年(昭和56)年10月ですが、米で「餅アイス」が登場したのは、その約12年後の93年で、「Mikawaya(ミカワヤ)」という米ロサンゼルスを拠点に日本の高級和菓子やスイーツを販売するユニークな菓子メーカーが発案しました。

 この「ミカワヤ」、扱う商品だけでなく、会社自体もユニークな歴史に彩られています。

 第二次世界大戦より前の1910年、愛知県からの移民、ハシモト・リュウザブロウ氏がロサンゼルスで創業した家族経営の和菓子店が始まりです。その15年後、甥(おい)のコウロク氏が経営を引き継ぎますが、第二次世界大戦で閉店を余儀なくされます。

 コウロク氏と妻のハルさんは米南西部アリゾナ州ポストンの日系米国人強制収容所に送られますが、終戦後、米ロサンゼルスに戻り、45年12月23日、ロサンゼルスの日本人街「リトルトーキョー」で再び店を開きます。

 その後、コウロクさんが亡くなったため、収容所で生まれた一人娘のフランシス・ハシモトさんが70年、27歳でCEO(最高経営責任者)になります。フランシスさんは小学校の教師でしたが、母ハルさんがお店を継いでほしいと懇願。約半年間悩み抜き、受諾します。

 フランシスさんはミカワヤの事業を積極拡大。74年以降、ロサンゼルス近郊の街トーランスやガーデナ、さらにはホノルルに出店。ミカワヤは旗艦店のリトルトーキョー店と合わせて4店舗体制に。

 80年代の初頭に入ると、夫のジョエル・フリードマン氏(現在72歳)とともに経営を切り盛りし、日本の伝統的な和菓子やスイーツを販売していたのですが、その頃、フリードマンさんは日本に旅行した際、たまたま、大福もちを口にします。「あのお餅のことが頭から離れませんでした。キュートなアイデアだけど、何かが間違っていると感じたことを覚えています」

 帰国後、フリードマンさんはフランシスさんに言います。「われわれは、既に米粉から作る生地でお餅のお菓子を作っている。だから、僕が日本で食べたようなお菓子を作ってみないか。でも、中にあんこではなくアイスクリームを入れるんだ」

 約10年間、研究とテストを繰り返し、2人は正しいレシピを開発。94年にホノルル店の店頭に「餅アイス」が初めて並びます。

 緑茶や小豆、マンゴー味など種類も豊富で、アジアの食材を専門に扱う食料品店やレストランで販売されるとじわじわ評判になり、クローガーやセイフウェイ、トレーダー・ジョーズといった米大手スーパーマーケットチェーンに販路を拡大すると人気に。

 フランシスさんは2012年11月、ロサンゼルス近郊の街、パサデナの自宅で肺がんのため69歳で亡くなりますが、彼女が亡くなるまでに「餅アイス」は既に、日本円にして年数十億円を稼いでおり、ミカワヤで最も高収益の商品に成長を遂げていました。

◇   ◇

 フランシスさんが亡くなった後、「ミカワヤ」は夫のフリードマンさんが経営のかじ取りを担いましたが、2015年、カリフォルニア州に拠点がある米投資会社「センチュリーパーク・キャピタル・パートナーズ」に身売り(所得額は非公表)。17年に「餅アイス」の販売をさらに強化するため「My/Mo Mochi Ice Cream」というブランドを立ち上げました。

 同時に「My/Mo-」のCMO(最高マーケティング責任者)に就任したラッセル・バーネット氏は、「餅アイス」をもっと多くの米国人に買ってもらおうと、チョコレートサンデー味やクッキー&クリーム味、イチゴ味、ダブルチョコレート味、ミントチョコレートチップ味など、米国人に親しまれた味の「餅アイス」を販売します。無論、今の時流に乗り、どれも「グルテンフリー(小麦といった穀物のタンパク質の主成分、グルテンを除いていること)」で、一部は乳製品も使用していません。

 バーネット氏は、自身が「スナック(お菓子)世代」と呼ぶミレニアル世代(1980年代から2000年代初頭までに生まれた人)にとって、「餅アイス」は大きな魅力を持つ商品であると認識していました。

 なぜなら「餅アイス」は、ひとつが約110カロリーで、米のスイーツの中ではカロリーが低いうえ、気軽にカバンなどに入れておいて、外出先でも簡単に食べることができるからです。

 米投資会社「センチュリーパーク・キャピタル・パートナーズ」の業務責任者のひとり、チップ・ロエリグ氏はCNNに「われわれが買収したとき『餅アイス』を扱っていたお店は1000店舗未満で、消費者の80%が名前を聞いたことがないという素晴らしい商品でした」と述懐します。つまり、大きな手つかずの有望市場だったわけです。

 そして、その有望市場を制覇すべく新ブランドを立ち上げるという戦略は大当たり。現在、全米の約2万店で販売されており「バビーズ」や「ミスター・モチ」といった競合メーカーも続々参入していますが、米大手調査会社ニールセンの調べでは「My/Mo-」ブランドの「餅アイス」は市場シェアの約90%を占めるなど圧倒的。昨年の売上高は1億7500万ドル(約190億円)にもなるといいます。

 米市場調査会社NPDグループの食品・飲料業界のアナリスト、ダーレン・セイファー氏はCNNに「ここ数年、アイスクリームの種類は減っており、消費者は何か違うアイスを見たいと思っている。『餅アイス』はまさにその何か違うアイスで、新しい方向性を示す商品である」と称賛し、市場はまだまだ拡大するとの考えを示しました。

 フランシスさんの夫、フリードマン氏はCNNに「『餅アイス』が成功するまでに25年かかりました」と感慨深げに語り「どれほどの人が『餅アイス』を好んでくれているか知ると、本当に嬉しくなります」と喜びをあらわにしました。(岡田敏一)

【プロフィル】岡田敏一(おかだ・としかず) 1988年入社。社会部、経済部、京都総局、ロサンゼルス支局長、東京文化部、編集企画室SANKEI EXPRESS(サンケイエクスプレス)担当を経て大阪文化部編集委員。ロック音楽とハリウッド映画の専門家、産経ニュース( https://www.sankei.com/ )で【芸能考察】【エンタメよもやま話】など連載中。京都市在住。

 ■毎週、日本を含む世界のエンターテインメントの面白情報などをご紹介します。ご意見、ご要望、応援、苦情は toshikazu.okada@sankei.co.jp までどうぞ。

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