PR

ニュース プレミアム

【エンタメよもやま話】止まらない新型肺炎 グルメな人々との意外な関連性

新型コロナウイルスの拡大防止措置として、韓国・ソウルの中華街の中国食材店前で消毒剤をまく防護服姿の作業員=2020年2月5日(AP)
新型コロナウイルスの拡大防止措置として、韓国・ソウルの中華街の中国食材店前で消毒剤をまく防護服姿の作業員=2020年2月5日(AP)

 さて、今週ご紹介するのは、いまだ収束の気配が見えない、あのウイルスに関するお話です。

 産経ニュース1月31日付の「新型肺炎、エボラ、ペスト、HIV…人類を襲う恐怖のウイルスの意外な共通点」

https://www.sankei.com/west/news/200131/wst2001310009-n1.html

 でご説明したように、中国の中央部にある湖北省(こほくしょう)の省都、武漢市(ぶかんし、人口約1100万人)から全世界に拡大した新型のコロナウイルスによる肺炎ですが、1月25日付の香港の英字紙サウスチャイナ・モーニングポスト(SCМP、電子版)などによると、感染者の多くが武漢市の市場に出入りしていた従業員や利用客でした。この市場は牛や豚だけでなく、クジャク、コウモリ、ヘビ、サソリ、ラクダ、ロバ、ダチョウ、ワニ、アナグマ、ラッコといった外来種や絶滅危惧種を含む野生動物112種類の肉などを販売しており、このうち、中国に生息するアマガサヘビやタイワンコブラが感染源だった可能性が指摘され、同市場は1月1日に閉鎖されました。

 こうしたことから、欧米では、世界各地で営業している野生動物の肉などを扱う市場を全て閉鎖すべきだといった声が専門家などから上がっています。

 そこで今回は、日本では報じられないそうした専門家の意見や、珍しい野生動物の肉を好む人々の意外な素性などをご紹介します。

    ◇   ◇

 1月24日付の英紙ガーディアン(電子版)は「新型コロナウイルスの大流行の最中、全世界で野生動物市場の禁止を叫ぶ」との見出しで、前述した武漢市の同市場では、生きているオオカミの子供やサソリ、リス、キツネ、ジャコウネコ、ハリネズミ(恐らくヤマアラシ)、サンショウウオ、カメ、ワニをはじめ、ワニの尾や腹、舌、腸など、いくつかの動物のさまざまな部分が売られていたといった状況とともに、ヒトが肉などを食べるために売られている野生生物が、新たな伝染病の発生リスクを高めるといった中国を含む各国の専門家らの意見などを紹介。

 そのうえで、全世界規模で野生動物の市場の営業は禁止すべきで、ヒトによる消費のため、絶滅危惧種を含む野生動物を販売していることが新型コロナウイルスと過去に発生した大規模な伝染病の原因であると警告しています。

 こうした専門家の警告は今に始まったことではないのです。

 2002年から2003年に中国で重症急性呼吸器症候群(SARS)が猛威を振るった際には、拡大の収束と同時に、当局はこうした野生動物の市場の営業を禁止したのに、いつの間にか同市場は再び営業を始め、今では中国やベトナムをはじめ、他の東南アジアの地域にまで広がっています…。

 1月24日付の米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ、電子版)によると、SARSの大流行の際は、香港の研究者が、こうした市場に売られていたジャコウネコが潜在的な発生源(もともとはコウモリ)であると特定。これを受け、2003年に全ての野生動物の取引が禁止されましたが、同年の後半には、衛生管理が行き届いた認可農場で繁殖したジャコウネコを含む54種の禁止が解除されるなど、時間の経過とともに対応が甘くなっていったのでした。

    ◇   ◇

 SARSが猛威を振るった時点で、中国の科学者たちは、人が野生動物の肉を食べることの危険性を論文で訴えていました。英の名門、イースト・アングリア大学で生物科学を研究するダイアナ・ベル教授は前述のガーディアン紙(電子版)に「こうした危険性を強調する多くの利害関係者たちの間で、長きにわたる議論がありました」と前置きしたうえで、意外な事実を明かしました。

 西アフリカを中心に約1万1000人の命を奪った平均致死率50%というエボラ出血熱は、オオコウモリからチンパンジーやゴリラ、サルに感染し、それらの肉やコウモリを食べる貧しい村に住む人々が感染しました。

 ところが中国の場合は逆で、こうした野生動物の肉は安くはないのです。ベル博士はガーディアン紙に「中国では今や、これらの肉は高級品になっています」と明言。「現在、これらの野生動物は、違法取引によって総額数十億ポンドで売買されています」と明かしました。

 なぜ高級品扱いなのか。大枚をはたいても食べたいグルメな人が大勢いるからです。ベトナムとの国境に接する中国南部の広西チワン族自治区出身のビジネスマン、テリー・ガオ氏もそんなグルメのひとりですが、彼はWSJ(電子版)に、これまでから野生動物の肉を食べており、SARSの潜在的発生源と特定されたジャコウネコには特別なおいしさがあるなどと説明したうえで、こう語りました。

 「なぜ食べるのかって? おいしいからですよ。説明するのが本当に難しいのですが、子羊の特別な味わいと同じように、ジャコウネコも肉そのものに言い難いおいしさがあるのです。特別な方法で調理する必要はありません。一度味わうとジャコウネコのおいしさが分かりますよ」

    ◇   ◇

 実際、ガオ氏のようなグルメな人は少なからず存在するようです。1月30日付の米ネイチャー系雑誌ナショナル・ジオグラフィック(電子版)は、2014年に北京、上海、広州、昆明(こんめい)、南寧(なんねい)の5都市の計約1000人を対象に行った野生動物の消費と保護意識に関する学術調査の結果を紹介しています。

 それによると、広州では調査対象者の83%が前年に野生生物を食べていましたが、上海では14%、北京ではわずか5%と、都市によって結果が大きく違っていました。

 また中国全土での調査結果では、回答者の半数以上が野生動物は食べるべきではないと答えるなど、過去数年間に中国で野生生物に対する保護意識が高まっていたことが明らかに。その一方、高収入・高学歴の消費者の間で野生動物の消費率が高いことが分かりました。

 しかし、米ワシントンDCのジョージタウン大学の微生物学・免疫学科の助教授、エリン・ソレル氏によると、ヒトと動物に共通する感染症の70%は野生動物に由来するといい、HIV(ヒト免疫不全ウイルス)やエボラ出血熱、SARSなどは野生動物からヒトに感染し、世界的に猛威を振るいました。

 そのため、ダイアナ・ベル教授はガーディアン紙(電子版)に「野生動物の市場の営業を終わらせる時がきました。中国と周辺国は、野生動物の需要と供給を減らし、こうした軟弱市場の閉鎖を優先事項にする必要があります。われわれは何度警告すればいいのでしょう?」と宣言し、こう訴えました。

 「人々は野生動物を食べるのを止める必要があります。若い世代はすでにそうしており、多くの著名な中国人もすでにそう訴えています。野生動物を食べるのは古い世代の人々です。これらの市場は武漢市だけではなく、中国全土とベトナムにあります」

 また、中国の著名な環境保護活動家、ジンフェン・チョウ氏も1月30日付の英紙ガーディアン(電子版)に「こうした一時的な禁止は十分ではありません。少なくとも新しいルールが導入されるまで、取引は無期限に禁止されるべきです。われわれは、違法な野生動物の取引によって引き起こされる同様の病気に既に罹患(りかん)しており、取引を禁止しなければ、再びこうした伝染病が発生するでしょう」と訴えました。

 ジャコウネコのような“究極のジビエ”と言える野生動物は他にないおいしさなのかも知れませんが、珍しい野生動物の肉に大金をつぎ込むリッチなグルメのこだわりのおかげで、世界中が恐ろしい伝染病で大騒ぎになる事態は直ちに防がねばなりません。    (岡田敏一)

     ◇

【プロフィル】岡田敏一(おかだ・としかず) 1988年入社。社会部、経済部、京都総局、ロサンゼルス支局長、東京文化部、編集企画室SANKEI EXPRESS(サンケイエクスプレス)担当を経て大阪文化部編集委員。ロック音楽とハリウッド映画の専門家、産経ニュース( https://www.sankei.com/ )で【芸能考察】【エンタメよもやま話】など連載中。京都市在住。

     ◇

 ■毎週、日本を含む世界のエンターテインメントの面白情報などをご紹介します。ご意見、ご要望、応援、苦情は toshikazu.okada@sankei.co.jp までどうぞ。

関連トピックス

あなたへのおすすめ

PR

PR

PR

PR

ランキング

ブランドコンテンツ