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【田村秀男のお金は知っている】貿易戦争はひとまず「休戦」となったが…米中合意は中国不安の「火種」

 米中両国は15日に「第1段階」の貿易合意書に署名し、2018年7月に始まった米中貿易戦争はひとまず「休戦」となった。米国など世界の株式市場の好材料のはずだが、上昇相場には息切れ感が出始めている。中国経済はむしろ対米貿易黒字削減合意が足かせになる恐れがあるからだ。

 第1段階合意の最大の柱は、中国側が輸入を2000億ドル積み増すことだ。米通商代表部(USTR)のもくろみは対中貿易赤字の大幅削減だが、17年に年間3372億ドルだった対中赤字は1200億ドル余り減り、2100億ドル程度になるという。

 トランプ政権の意図通りに習近平政権が応じるかどうか。大豆やボーイング機の購入は中国共産党の指令次第でどうにでもなるが、対米黒字の大幅縮小は何よりも経済の根幹を揺さぶる。

 中国の通貨金融システムの基本はドル本位である。ドル流入量が減ると中国人民銀行による人民元資金発行が大きな制約を受ける。主要なドル流入源は貿易収支など国際収支黒字のほかに外国による対中投資、対外借り入れなどを含む対外負債項目である。中国の通貨当局は日本企業などに外貨を持ち込ませて、それを外貨準備(外準)に組み込んで抱え込み、対外送金を厳しく規制する。

 対外貿易収支黒字は、中国側統計でみると、昨年では全体で年間約4300億ドル、このうち対米は約3000億ドル(米側統計では約3500億ドル)と、対米黒字が大半を占める。国際収支全体の黒字額は18年で約500億ドルで、10年は千数百億ドルまで回復しているものの、対米黒字が1200億ドル減ると国際収支(経常収支)は赤字になりかねない。

 すさまじい勢いで増えているのは資本逃避である。中国の外準構造からすれば、貿易収支を含む経常収支の黒字と対外負債の増加分合計は外準増加となるはずだが、外準は15年9月以降、マイナスか横ばいにとどまっている。19年9月までの1年間の経常収支黒字は1920億ドルで、対外負債は3400億ドル余り増えた。だから、外準は5000億ドル以上増えてもおかしくないのに、前年比160億ドル減っている。

 米中貿易戦争が「和平」へと向かう見通しは全く立たない。第1段階合意は、米国産品の大量購入が中国側の約束通りに履行されるか厳しく監視し、合意違反とみればただちに制裁関税を対中輸入品全てに拡大する構えだ。トランプ政権はしかも、華為技術(ファーウェイ)など中国のハイテク企業を米市場から締め出すほか、技術を禁輸し、日欧などにも同調を強く求めている。

 今秋の大統領選後には、中国共産党主導経済の生命線である国家補助問題を軸に、米中交渉が本格的に再開される。貿易戦争はこれまで以上に激化するだろう。中国から資本は今後も巨大な規模で逃げ続け、金融危機へと転化しかねない。(産経新聞特別記者・田村秀男)

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