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【経済インサイド】本当に老後に2000万円必要なのか

 この試算を受けて世論が過剰に反応した理由の一つが、2000万円という額があまりに巨大だからだ。たとえば、45歳の人が65歳までの20年間で2000万円を蓄えようとしたら、1年間で100万円、1カ月間で8万~9万円を貯める必要がある。

 これは、だれもが簡単に貯められる額ではない。国税庁が昨年9月に発表した「平成30年分民間給与実態統計調査」によると、給与所得者の年間の平均給与は441万円(男性=545万円、女性=293万円)。単純計算すると月当たり約37万円(男性=約45万円、女性=約24万円)になる。

 住宅ローンの返済や子供の学費がかかる世代が、毎月37万円の中から8~9万円をひねり出すのは至難の業だ。税優遇のある「iDeCo(イデコ、個人型確定拠出年金)」や「つみたてNISA(少額投資非課税制度)」などを活用して資産運用する手もあるが、思い通りにお金が増えないだけならまだしも、元本割れのリスクもある。

 一方、2000万円といわず、数百万円の貯金に成功したとしても、あっという間に使い果たしてしまう可能性がある。

 取材を通した実感では、配偶者と死別したり離別したりした高齢者は注意が必要だ。取材したある一人暮らしの高齢者(男性)は、会社を定年退職後、寂しさもあって毎晩のようにカラオケや居酒屋に通い詰め、百数十万円の貯金をわずか2年で使い果たしてしまった。特に無駄遣いせず普通の生活をしていても、数百万円程度なら、すぐ使ってしまう可能性がある。

 むしろ必要なのは、預貯金をある程度、用意しながらも、老後も収入を継続的に受け取れる準備をしておくことだ。最も有効なのは、仕事を続けることだろう。企業は高齢者にもっと門戸を開く必要がある。高齢者自身は、元気に働けるくらいの健康を維持しておかなければならない。

 もう一つは、生活の支出をなるべく減らすことが必要だ。生活の苦しい高齢者を支援をしている人らに聞くと、特に大きいのは家の支出だ。月10万、20万円といった住宅ローンの返済を続けていたら、生活は苦しくなる。可能なら現役を引退する前にローンの返済を終え、家を完全に「持ち家」にしておくほうがよい。賃貸なら、なるべく家賃が安い住宅に住む必要があるが、「一般的には、亡くなったりする可能性が高い高齢者は、部屋を借りづらい。私は高齢者にも部屋を貸しているが、病気がないか慎重に調べる」(60歳代のアパートオーナー)。

 収支のバランスがとれた生活を、どう実現するかが老後のカギとなる。(経済本部 山口暢彦)

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