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【山本一力の人生相談】そろそろ終活 親に聞いてもらうには?

相談

 30代女性。私の両親は70代前半でまだ元気なのですが、今のうちに終活の話し合いを始めたいと思っています。

 たとえば口から食べられなくなったら胃瘻(いろう)をつけたいのかどうかなど、終末期医療についての希望はあらかじめ聞いておきたいです。兄と相続でもめたくないから今のうちに遺言書も作ってもらいたいと考えています。

 ところが、そうした話を母に持ちかけると、あるときは笑って受け流され、またあるときは「あんたはいつもお金の話ばかり」と言って聞く耳をもってもらえません。あらかじめ準備を進めておかないと、親族ともめたり、悩んだりしそう。終活話に耳を傾けてもらうには、どうすればいいでしょうか。(東京都、会社員)

回答

 門松は 冥土の旅の 一里塚

 めでたくもあり めでたくもなし

 一休禅師が詠まれたという一首。

 今年72の年男は、まこと門松は一里塚だと実感しつつ、元日の屠蘇(とそ)を祝った。

 文面から察するに、相談者のご両親も、わたしと同年代ではなかろうか。

 これを前提として申し上げる。

 まだ三十代のあなたは「明日も朝日を拝める」と、決めておいでではなかろうか。

 唾棄するにすら値しない「終活」なる語句を、使えることがその証左だ。

 故池波正太郎さんは「この世でひとつだけ確かなこと。ひとは死に向かって歩いていることだ」と、繰り返し書かれている。

 この言葉には、生きていられることへの深い感謝と、自分が保つべき尊厳の両方が、篤く充(み)ちているとわたしは考えている。

 あなたが書かれた「終活」。この語句には、相手を敬うこころがない。

 一里塚をおのれの足で律儀(りちぎ)に歩む者は、背筋を伸ばし、内に尊厳を抱えている。

 ひととしての尊厳を力の源泉として、一歩を踏み出し、次の一里塚を目指している。

 順番通りなら、親は先に鬼籍に入る。

 おのれの没後を考えて、達者なうちに必要な手立てを講ずること。これは先に逝く者がなすべき務めだ。

 しかし断じて、活動ではない。

 後顧に憂いを残さず。

 これは尊厳に裏打ちされた、誇り高き行為である。

 親に対する敬いをあなたが抱いていれば、いつなんどきでも、話し合えばいい。

 齢をひとつ重ねるごとに、あと幾つの一里塚があるやらと、当人は常に考えている。

 ご両親が達者なうちに、相手への敬いと愛情を抱いて向き合われたい。

回答者

山本一力 作家。昭和23年生まれ。平成9年「蒼龍」でオール読物新人賞を受賞しデビュー。14年「あかね空」で直木賞受賞。近著に「牛天神 損料屋喜八郎始末控え」(文芸春秋)、「長兵衛天眼帳」(角川書店)、「ジョン・マン7 邂逅(かいこう)編」(講談社)、「後家殺し」(小学館)など。

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 〈メール〉life@sankei.co.jp

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