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【田村秀男のお金は知っている】米vsイラン戦争回避も…予断許さない石油供給 日銀“異次元”金融緩和に中東不安の「冷や水」

 米国とイランがひとまず戦争回避に動いたことで原油、株式市場とも落ち着きを見せているが、予断を許さない。石油輸出国のイラクやリビアなどの政情が不安定でいつ石油供給に異変が起きるか分からないからだ。

 巨額のカネがだぶつく現代では、石油市場と金融市場の逆相関度が極めて高い。ニューヨークの原油先物市場の取引規模はニューヨーク株式市場の200分の1にしか過ぎない。ほんの少しだけでも金融市場から流れ出たカネが原油投機に向かえば、たちまち原油は高騰する。2007年、米国のサブプライム・ローン問題表明化に伴う金融不安を機に原油が暴騰して、08年9月のリーマン・ショックへとつながった悪夢がそれだ。

 国際金融市場を動き回る余剰マネーをズバリ定義することはできないが、資金供給源である主要国銀行の国際融資が目安になる。そのデータがスイス・バーゼルにある世界の主要中央銀行の総本山、国際決済銀行(BIS)の国際与信統計だ。国際融資残高は昨年6月末時点で27兆4000億ドル(約3017兆円)、サブプライム・ローン問題表面化と石油価格高騰が始まった07年半ばの水準と同じである。

 国際融資は08年3月に30兆ドル近くまで膨らんだ後、萎縮し始め、リーマン・ショック以降は長く停滞してきたが、ここ数年間で再び上向いている。牽引(けんいん)しているのは邦銀で、国際与信残高は英米を圧倒して世界最大だ。

 邦銀はアベノミクスの柱である日銀の量的金融緩和開始後、急速な勢いで対外融資(国際与信)を増やしてきた。19年6月末の邦銀対外融資を12年12月末と比べると、1・3兆ドル増えている。主要国銀行の国際与信合計額はその間1・9兆ドル増えたが、うち3分の2は邦銀による。英銀行の与信は減り、米銀は微増にとどまる。邦銀は世界の余剰マネー供給を一手に引き受けている。

 グラフは12年12月以降の邦銀の対外融資と米株価の推移である。一目瞭然、両者は密接に連動している。統計学の相関係数(完全相関は1)は0・94で完全相関に近い。もちろん、それだけで因果関係を表すわけではないが、カネに色はなく、日本から流れ出たカネは他の金融機関や投資ファンドを通じて高い収益が見込める分野に投じられる。日本のカネは日銀によって創出され、民間銀行が受け取るが、デフレで内需が低迷する国内融資ではなく、国際融資に回るのだ。

 単純化すれば、日銀の異次元金融緩和政策は米国株価を押し上げ続けている。米景気は歴史的に見て、株高に反応する度合いが極めて高い。家計、年金は株高で潤い、企業は株式市場で低コストの資金を調達して設備投資するからだ。

 だが待てよ、中東の動乱で石油高騰が起これば好循環は瞬く間に崩れ、金融危機が世界を覆い、ブーメランのごとく日本を襲ってくる。金融緩和偏重で、財政を緊縮してデフレを温存する政策は不毛なのだ。(産経新聞特別記者・田村秀男)

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