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【痛みを知る】肩周りの痛み、放置厳禁 森本昌宏

 原因が明らかでない「五十肩」は広く知られているが、その他にも関節周囲の異常による「腱板断裂」「インピンジメント症候群」などが多く発生している。これらは五十肩とは異なり、明らかな器質的異常に起因する痛みである。

■加齢による変化や外傷、使いすぎ

 肩関節は、体中に存在する多くの関節のなかで最大の可動域(動かせる範囲)を有している。しかし、一方で他の関節に比べると靱帯(じんたい)による補強が極めて弱く、その代わりに筋肉が補強の役割を担っている、との特徴を持つ。したがって、加齢による変化や外傷、使いすぎなどによって、容易に関節周囲に痛みを生じるのだ。

 (1)「腱板断裂」…ここでの腱板とは、上腕骨の上部を前、上、後方から補強している腱(肩甲下筋、棘上筋(きょくじょうきん)などの筋肉の端にある)によって構成されている。この腱板の加齢による変性に、外傷が加わると断裂が生じる。特に上方から上腕骨の後面に付いている腱の断裂が多い。この場合、腕を動かそうとした瞬間や夜間就寝(特に患側を下にして)時に痛みが発生する。断裂した部位が硬くなると、「コクッ」とした音が鳴る。

 ペインクリニックでは、MRIや超音波による診断を行った後に、鎮痛薬の処方に加えて、関節内へのヒアルロン酸ナトリウムや局所麻酔薬の注入、肩甲上神経ブロックなどの治療を選択する。しかし、若年者でよく動き回られる方で、筋力低下(大断裂がある)が起こっている場合には、縫合手術(関節鏡を用いて)の適応となることもある。

■たかが痛み…は×

 (2)「インピンジメント症候群」…インピンジメントとは、“衝突”あるいは“まくれ込む”ことを意味する。腱板などが他の部位と繰り返し摩擦、衝突することで発生する。したがって、その原因は肩の使いすぎである。腕を前方に上げると90度前後で強い痛みを生じ、夜間の寝返りの際にも痛みを自覚する。進行すると腱板断裂を引き起こす。

 ペインクリニックでは、腱板断裂と同様の治療により対処している。

 (3)その他…その他で肩関節の周囲に痛みを生じるものとしては、「腱板炎」、それに続いて起こる「肩峰下滑液包炎」の頻度も高い。腱板のなかに石灰(カルシウム)が沈着する「石灰沈着性腱板炎」では、灼(や)けるような激痛を引き起こす。上腕に力こぶを作る上腕二頭筋の「上腕二頭筋長頭腱腱鞘炎」では、肩関節に加えて上腕~前腕まで拡(ひろ)がる痛みを生じるので厄介だ。頚の骨に異常がある場合にも肩~上肢に、心臓や胆嚢(たんのう)の疾患でも肩に痛みを生じることがあるので注意が必要だ。

 たかが肩の痛みと安易に考えて、放置することは避けていただきたいものである。

    ◇

 【プロフィル】森本昌宏(もりもと・まさひろ) 大阪なんばクリニック本部長。平成元年、大阪医科大学大学院修了。同大講師などを経て、22年から近畿大学医学部麻酔科教授。31年4月から現職。医学博士。日本ペインクリニック学会名誉会員。

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